短編とか。
□捕らえる、囚われる
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「アリス、また死んじゃったね」
「………何の用だ」
「寂しがり屋な帽子屋さんを慰めに?」
「帰れ」
「人間もねぇ、ウサギみたいに寂しかったら死んじゃうんだよ。わたしは帽子屋さんのことが好きだから、死んで欲しくないから、こうして来てるのよ」
がちゃり、無機質な音と共に安全装置が外された。
真っ暗な銃口はこちらを向いている。まるで小さなウサギ穴のよう。
「黙れ。撃つぞ」
「わざわざ事前に撃つって言ってくれるなんて、帽子屋さんは優しいね」
「ただの気まぐれだ。…早くしねぇと本当に撃つぞ」
「怖い怖い。…なんて、ね。そんな脅しは効かないってことくらい分かってるんでしょ?わたしも“先生に殺されたい”未練だもの。他の子と一緒」
「………はっ、」
彼は髪をかき溜め息を一つ虚空へ吐くと、まるで興が冷めたと言うように背中を向けた。
そしてまた砂糖に溢れた紅茶を楽しむのに集中し始めたらしい。こちらには見向きもしない。
「……で、どんな気分?猫くんに可愛いアリスを取られるっていうのは」
「最悪だな」
「へぇ。なんか猫くんの思い通りーって感じだね」
帽子屋さんは押し黙った。
今回のアリスは一段と可愛く、割と出来の良かった私なんかよりもずうっとアリスに近かった。それなのに猫くんに邪魔されたから、彼の機嫌は最高に最低だろう。
「………お前は、」
「うん?」
「変な未練だな」
「……と、言うと?」
ずずず、と音を立てて彼は紅茶(恐らく砂糖の甘さしか感じない)を飲み干し、やはりこちらに背中を向けたまま、言う。
「アリスを殺そうとしない」
「だってわたし、お話が終わるのを楽しみにしてるもの。正直もう一度アリスに戻りたいとも思わないし」
「アリスが死ぬ度々俺を訪ねてくる」
「だって帽子屋さんとお話するにはきっかけがいるしー」
「他のアリスの十倍程馬鹿」
「………けなさないでー」
「未練のクセに、」
「ん?」
「………未練のクセに、アリスよりも面白いなんてな」
「…………ねぇそれやっぱりけなしてるでしょ」
不平を漏らしてもやっぱり振り向かないし笑いもしない。ああ、やっぱり未練(わたし)は未練だなぁー、なんて。
でも他のアリスよりもちょっと特別な響きのそれをくれて、ちょっと嬉しくも思う。
そこで単細胞って昔言われたことを思い出す。確かにそうかもしれない。
「…帽子屋さん」
「ンだよ」
「いつか。わたしのことも、他の子と同じように…殺してね」
「………いつか、な」
「そ。いつか」
優しいなぁ。やっぱり。
わたしは乾いた笑いを飲み込んだ。
ねぇ先生。わたし、どうしようもない未練だけど、まだあなたを好きでいていいかな?
そんなに優しくされちゃ、期待しちゃうよ。
*****
意味不明すぎて笑える
88番目が死んだ直後のお話