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共犯者 ※近高(銀高、近土前提)+銀土(銀→土)


高杉に呼び出された。

違うクラスだが、同じクラスの沖田と仲が良かったから接触はあった。
とはいえ、すれ違った際に挨拶したり、ほんの立ち話をする程度だ。
彼のことはほとんど知らない。
特別な印象も持ってない。顔は男とは思えないほど繊細で綺麗だと思ったが。
知っていることと言えば、担任の坂田銀八と付き合っていること。
沖田から聞いた情報だ。

(一体何の用なんだか…)

教室移動の時だ。
いきなり「今日の放課後時間あるか」と尋ねられ、首を傾げつつ「ない」と答えれば、
彼は少し笑って「じゃあ空き教室で待ってる」と、その言葉だけを置き土産に去っていった。
思えば、ちょっと意味深だった気がしなくもない。


「あれ?」

約束の場所にたどり着いた。
が、教室の中は真っ暗で鍵が閉まっていた。本人もいない。
何の冗談だ。からかわれたのか。

「よっ」

無防備な背中をトンと叩かれて、あっと声を上げそうになる。
咄嗟に振りかえると、いた。高杉だ。

「悪ィな、わざわざ」
「…いや、別にいいけどさ」

憎めない笑みを浮かべられた。

「二人きりで話してえことがあるんだ」
「え?」
「ここじゃ話づれえから、中、入らねえか?」

“二人きり”という言い回しに、妙なニュアンスがあった。
彼は教室の鍵を持っていた。
疑問が募るばかりだが、勝手に教室は開放された。

「先、入れよ」

彼がそう言うのは自然な流れだったから、近藤は何の疑いもなく足を踏み込んだ。
数歩進むと背後でガシャンと扉の閉まる音がした。
そのあと、すぐに鍵がかけられた。そこまでするかと、怪訝に思って近藤は振り返った。

「おい、電気つけろよ」
「………」

高杉の手はスイッチに触れようとしなかった。
そのとき暗闇で薄ら見えた彼の表情に、嫌なものを感じた。

「どういうことだ」
「協力してくれよ」
「は?」

意味不明な返しだった。
すっと高杉の人差し指が2本、彼自身の制服のベルトに触れた。

「協力さ…」

それが解かれた。
ほとんど間を置くことなく、今度はズボンのチャックが緩められた。

「お、おい何を…」
「あんたも悔しいだろ?」

恋人に浮気されっぱなしじゃあさ。

近藤の目が見開かれた。
土方が自分以外の誰かに惹かれていることは薄々気づいていたし、それは敢えて見て見ぬふりをしていたのだが、
それを、
この高杉に突きつけられた。
彼はなぜ、そんなことを知っているのか。

ズボンと下着がするっと足首まで落ち、高杉のしなやかな両脚が空気にさらされる。

「俺の気持ち、わかるだろ?」

シャツのボタンを手際よく外していく。

「意味わかんねえよっ、何、考えてんだ…っ」

一方で眼前の艶めいた輪郭に翻弄され、近藤は冷静さを失いつつあった。
呆気に取られているうちに、高杉が身にまとうものは何ひとつ無くなっていた。
脱いだシャツで身体を少し庇っているだけだ。

「誰とか知ってるか?土方のやつ…」

薄暗い世界でもその存在を際立たせる、触り心地の良さそうな雪色の二の足。
それは相手の欲望を根底から揺さぶり、少しずつ昂ぶらせるように近藤に歩み寄っていく。


「ちょくちょく逢引してやがるのさ…ウチの銀八と」
「っ!」


今なんて?
土方の浮気相手は、高杉の恋人の坂田銀八、だと。
鈍器で後頭部を殴られるような衝撃と共に、高杉の裸体が近藤を捕えた。

「っ、やめろっ…!」
「我慢すんなって…舌出せよ、ホラ」

形の整った唇が近藤の唇に掠った。
唇から舌が顔を出し、近藤の上唇を舐め上げる。
近藤の理性の糸は切れかけた。

何度も唇の厚い部分を舌で掃かれると、近藤のそれは勃ち上がりを見せ、
急に何者かの意志が乗りうつったように、両方の手が高杉の身体を撫でまわし始めた。

近藤が高杉の舌に漸く応えた。
舌先から滑り込み、一気に高杉の口内に舌を侵入させた。

ずるりと吸いたてる音が繰り返される。
胸を上下する近藤の指が乳輪に触れると、高杉が悩ましげに眉を寄せる。

こいつ、感じている。

そう分かった瞬間、征服欲が近藤の脳を支配した。
高杉の身体を反転させ、後ろから羽交い絞めにするような体勢になった。

「はっ…あんたもノリ気じゃねえか…」

してやったりの顔をされて、そんなつもりじゃない、と言ってやりたかったが、
そんな余裕はなかった。

この艶めかしい肢体を隅々まで味わいたいという本能が先走り、背後から手をまわして、胸のかろうじてある肉の部分を揉みしだいた。
ただ愛撫を受け止めて喘ぐのは高杉の性ではないらしく、後ろの近藤の頭を掴んで、
唇に噛みついた。

息苦しさと昂ぶる性欲で、近藤はついに高杉の性器に触れる。
鷲掴んだ後、上下に擦ると高杉が引きつったような悲鳴をあげる。

「んうっ…ふ…っ」

強気だったキスが弱弱しくなる。
快楽に痺れて力が入らないらしい。

「あぁっ、バカ…イっちまう、だろっ」

夢中でしごいていると、耐えかねた高杉が近藤の手を制する。
焦るな、とぴしゃりと言われた。
高杉は何度か近藤の唇を味わうと、また向き合う形になり、そのまま膝をついて近藤のベルトに手をかけた。
まともな思考ができないせいか、高杉の成すことを黙って見ているしかなかった。

「こんなに勃たせやがって…」

うっとりとした表情で言われた。
牙をむき出しにして開かれた口が、それに覆いかぶさる。

「う、わ…っ」

彼の舌技に、頭が痺れた。
ブツは大きいほうだと自負しているが、高杉は休むことなく、しかも根元までしっかり銜えこんでいる。

「っ…高杉、…」
「………」
「先生への、あてつけで…こんなことを…?」

多分そうだろうと踏んだ。それ以外、自分を誘う意味はないはずだ。

「当然だろ…言ったじゃねえか、協力してくれって」

僅かに細めた切れ長い目は、苦々しくも坂田銀八への執着を感じさせた。
坂田銀八に裏切られたことの悲しみと憎しみを自分ひとりでは抱えきれず、浮気相手の恋人に抱かれることで、浄化させようというのか。
かわいそうに…。
否、自分が高杉を受け入れてしまったのも、同じ理由だろう。

「負け犬同士、傷を舐め合おうってわけだ…」

限界の一歩手前のところで、高杉は愛撫を止めた。
すっと立ち上がり、近藤の首に腕を絡めた。

「さ…挿れてくれよ、あんたの…」

ココに。
自らの恥部を羞恥のかけらもなく晒し出す。

「なら慣らしてから」
「いい」

尻を撫でながら指をさし入れようとすると、高杉が首を振った。

「すぐに開くから心配ねえよ…」
「え?」
「仕込まれてっから」

彼は苦い笑みを浮かべた。
その仕草ひとつで言わずとも、高杉を仕込んだ相手は理解できたが。
暗黙の了解で気にしないふりをし、机の上に高杉の手をつかせ、尻を突き出させた。

「なんだ…後ろが好きか?“誰かさん”と一緒だな…」
「…嫌か?」
「体位の好き嫌いはねえよ…突っ込んでいいぜ」

形のいい双丘が近藤を誘った。
左右の二本の指でぐいっと入口を開き、おのがいきり立ったモノを宛がい、先端を忍ばせた。

「ん…っ」

少しずつ中への侵入を果たしていくが、濡れてないせいかやはり苦しそうだ。

「力抜いて…」
「…っは…ぁ……」

素直に息をはいた高杉には、少々驚かされた。
徐々にほぐれていく感触に、もう大丈夫そうだと安堵した。

「あっ」

半分挿入したところで、残りを一気に埋め込んだ。
甘ったるい声をあげたので、痛みはないのだろうともう一度突きあげた。

「あっ…思った、より…んっ、んっ…デカい、な…」
「…図体もでけえからな」
「はっ、そりゃ違いねえ…ぅあっ!」

一度黙らせてやりたいと思ったのは、ひそかに芽生えた加虐心からだろうか。

「あっ…はぁっ、あっ、っあ、ぁっっ!」

高杉の口からたばしる悦の声に興奮し、腰の動きも自然と早まる。
自分は一体何をやってるのだ。
そんなことを頭の隅で考えつつも。

「いやっ!イ、イくっ、近藤、イっちまうっ!」
「っ、はっ…っ」

肉がぶつかり合う音が生々しい。
吐精の欲を告げる高杉の前を激しくしごいて、近藤は追い込みをかける。

「ぁあっ、あ…っ!」

高杉の声が掠れた。
ぼとぼとと机に白い液が落ちる。
イった証拠だ。
そのあと何度か腰を動かしていると自分もイキそうになり、慌てて引き抜くと、
数歩さがって高杉の二つの小さな卵型に勢いよくぶちまけた。

「っは……はぁ…はぁ…ははっ」

快楽の余韻で息を切らしながら、高杉は意味のない笑いを漏らした。
それは自身への嘲笑とも取れた。









「悪かったな…時間とらせて」
「いや…」

若い故に蘇りも早く、汚れた場所をティッシュで一通り拭き終わると、
何もなかったかのように彼はさっさと制服を着直し、ぼさぼさの髪を軽く整えた。

「今日のことは誰にも口外しねえから安心しろよ。だからあんたも、胸の中にしまっといてくれや」
「………」

軽い物腰でそう言われ、少し戸惑った。

「…バレたら、お前どうする気だ…」
「………」

教室の扉が開かれ、急な光の侵入に目をつぼめた。

「あんたは?」
「え?」
「土方と別れて、俺と付き合ってみる?」

ふっと振り向いた彼の表情は笑ってなく、近藤は言葉を失った。

「なんてな、冗談だよ」

けらけらという笑い方は彼独特のものなのだろう。

「そんなことしたら、ぶっ殺されるわ俺」
「え?」
「何でもねえよ…じゃ、帰るわ」

ひらひらと手を振ると、彼は“ただの知人の顔”に戻って出て行った。

彼が姿を消した途端、腰が抜けた。
今の今まで起きていたことを受け止められない自分と、今突きつけられている現実と。
その葛藤が、近藤をどこまでも疲労させた。


「なんか…とんでもねえことになったかも…てか、なってるかすでに…」


不抜けた声で、独り言をぼやいた。
教室にはまだ、あの熱気が立ち込めていた。
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