日和

□貴方の血
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「なぁ妹子」

「はい、なんです?」


私の呼びかけに答える妹子。
一息つくと、言葉を続ける。


「私は血が嫌いだ。…見るのも、出すのも」

「そうですか」


さして興味のない様子。いや、血の話題などでテンションの上がる人間なんて最低な奴だけだろう。


「妹子はどうだ?好きか、嫌いか」

「…好きって言う人いるんですか?」

「さぁ…」


殺人鬼とかは好きなのかな。人をいっぱい殺してるし。


「僕も嫌いです…が、」

「?」


今まで机に向かっていた妹子がこちらを見る。その顔は妖しく笑っていた。
…こわい


「…ふふ、太子の血はどんな色なんでしょうね?」

「え、…いもこ?」

「ねぇ見せてくださいよ、僕に。貴方の血のいろ」


なにを言ってるの、この芋。私の血は赤に決まってるだろう。普段ならこう言えるだろう。
だけど、今はいえない。がくがく震えて、言葉を発せ無い。だって、妹子の手には包丁が握られてるんだから。

そうやって震えてたら、いつのまにか妹子に押し倒されていた。


「赤かな、緑かな、青かな」


そう子どものように、嬉々とした表情で私に近付く。こわい 恐い 怖い


「ちょっと痛いですよ〜」


そう包丁を近づけてきて、私の頬あたりに刃の部分を当てた。


「っ…痛ッ…」

「太子、いい顔してますよ。僕好みの、苦痛に歪んだ顔」


鋭い痛みがまだ襲っていて、どくどく血が流れてきて、妹子はにやにやと笑ってて。
こいつは狂ってる


「血の色も…正常なほどですね。血色のいい赤。綺麗。」

「いも、」

「ねぇ太子。
僕やっぱり太子の血だけは好きですよ。
太子の血、誰にも見せないでくださいね」


そう妖艶に微笑む妹子に、私は最大級の笑顔をくれてやった。







貴方の血は
(血だけじゃなく)(私の全てをくれてやる)
 

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