Novel
□INI(3〜)
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春夏が狙われていることにより、半強制的に家に留めた仁。
様々な事情を持ちながらも、時は止まることなく過ぎる。
取り分け未だに知らない知識を残して。
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第三項「紫音と破壊者?」
「で、何なのこのありさま」
「マイ仕事ツール」
「いや、プリント多!紙使いすぎ!森林破壊反対!」
「全部再生紙だよ。藁半紙〜。そしてわたしが把握する情報量はこの何十倍だからこれでも序の口」
僕の目の前にはふざけた人がいる。なんだかデジャヴだ。プリントの山に埋もれた仁がその景色が当たり前かのように平然と僕と会話していた。
「で、朝早くからたたき起こされたはいいですけど何かあるんですか?」
「あ〜、多分今日ぐらいにヤクザが襲撃しにくるから家から…いや部屋から一歩も出るな。以上」
「真面目に説明してください」
仁はいろいろな説明を省くようだ。たった2日間の事だが、それはもう明らかなことだ。
それはそうとして、今日は仁が自宅で自営の情報屋を開くらしく(予約制で本人の気分により受け付ける)、訳の分からん事情を持つ人達がくるそう。で、情報料は高いため値引きをさせるために人質使われても困るので…ということで部屋から一歩も出るなと。
「いやいやいやいや、そんなおっかない人達が来る訳?」
「うーん、知り合いとかもいるんだけど事情が事情だとお客さんが狙われる事もあるから」
「仁、もう一度聞く。僕はここにいて安全なの?」
「安全だよ。生きる保障はする」
だから何故いいきれる?仁が真剣に言い切るとホントに大丈夫そうだが納得はしきれない。そもそも、襲撃に対応しきれる戦いの心得をどれぐらい持っているのかというのも不安だ。
昨日は昨日で「春夏をハンターから守り逃げてきた」って言ってたが最後家壊しているし、その壁は結局春夏が魔法で直したし…。実際の実力はいまだ図れない。
「ま、邪魔するなってことでおとなしくしててよ」
「そのつもりだよ。面倒なことはこの前だけでもうたくさんなんだから」
この前、仁の家に来る前に僕は襲撃を喰らった。正確に言えば僕の兄が家の前で派手にやられたのだが、その後僕の生活が一変せざるをえなくなったことにかわりはない。
大分前の事の様ではあるが実際起こったのはここ一週間の話である。その割には訳の分からない事が多過ぎる気がするが、もはや気にしないのが最善策だ。詳しいことは後で知っても現状としては後悔にはならない。
とは言ったものの知りたい事もある。
「仁、そういえばなんだけど…。」
「なーにー?」
「兄さんはどうしてる?」
「…それ聞くか」
「兄さんは用心深い人だし頼める人なんて殆どいないことを僕は知ってる。だからホントは仁を信用すべきではないと最初は思っていたけど…だけど聞く。現状はどうなってるの?」
「全く、分からないのなら分からないなりに純粋にしていればいいのに…。」
仁は呆れたように僕を半目で見てきた。仁は何処までが本気か分からない。だが分からないなりにも……
「懸命にはできるってか?そんなひょーじょー見られたのは久々だな」
そっくりそのまま返してやるよ。僕が言いたいこと言いくるめるなんて。だから仁は信用すべきではないけど信用したくなるんだ。そんな感じの目を持っている……気がする(半目でふざけているが)。
「君の兄さんは無事だよ。入院していたけど自力で退院したし」
「……自力ってところを聞くと本当っぽいね」
「アイツそんなふうに弟から見られているのか……かなり不敏な奴だな」
「それは仕方ない」
僕の知っている兄さんはかなり自己犠牲な人だ。無茶と無謀を履き違える事がしばしばで、それだけ責任強いのが長所だが裏を返せば短所でもある。まぁそれに関しては理由があるが、今は止めておこう。
「無事なら良かった」
そう言って笑い仮自室である客間に向かう。実際かなり不安な点が残る無事な知らせだが、たぶん何とかなるのだろう。
そう言っていつも自分に言い聞かせる。
「いやぁ、似て非なる者と言うか何と言うか、どっから見ても君らは家族だねぇ」
そう仁が背中に呟いてきた(気がする)。