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□君が一番
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「太一さん…」

「なんだ?光子郎」


光子郎は太一の後ろに立ち、
少しうつむいて声をかけた。

振り向きはせず、返事をした太一。


モジモジして、
少し躊躇いながらも口を開いた。



「僕は…太一さんが、一番好きです…っ」


「うん」



緊張しているのか、少し渇いた声である。
太一はその声を聞いて静かに相槌を打った。


(いつもなら…、もっと見てくれるのに)


反応が薄く、聞き流されているのかと
不安を抱いた光子郎は、もう一度、言う。



「一番、好きです…。一番…いちばん」

「じゃあ二番目は誰?」

「えっ…?」


クスリと笑い、
光子郎の方へと笑顔を向けた。

太一の微笑みかけてくれる顔に
小さく身体が跳ね、
頬が赤く染まっていくのが
自分でもわかる。



(二番目なんて考えた事もなかった。)



振り向いた太一は
光子郎を己の方へと抱き寄せて、
腰に手を回し、片手で頭を優しく撫でた。

太一に身体を包まれ、普段なら安心して
自分も首に手を回すはずが、
緊張のあまり下を向き、
身体がふるふる震え始めた。



「…こうしろう。」


耳元で囁くように自分の名を呼び、
耳に吹きかかった吐息がくすぐったくて、
だけど心臓の音が煩いくらい、
どきどきして。

ゆっくりと顔を上げたら、
唇に柔らかい感触がした。

触れるだけのキスであったが、
先程の不安や緊張がスーッと解かれていく。


顔が離れて、太一の顔全体が見え、
身体の震えも止まった。



「ふふっ、俺も光子郎が一番好きだぜ?」



にっこりと笑う太一に、
光子郎も安心して微笑む。

そして首に手を回し、
もう一度、口付けをした。


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