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□急性LOVE中毒
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「光子郎、デートしてくれないか?」



「…はい?」




いきなりの太一さんの一言に
僕の頭はついていけなかった。




金曜日の放課後のことでした。



中学のパソコン部が終わり帰宅準備をして
コンピュータールームから出た瞬間、

目の前に、僕の尊敬する太一さんが現れた。





そして、さっきの一言。





「…頭でも打ったんですか?」


「いや、そうじゃなくて…俺さ
好きな人が出来たんだよ」



ああ、太一さんにも春が来たんだ。


なんだか嬉しいような寂しいような
複雑な気持ちになった。




けど、どうして僕?


「それは良かったですね、応援してますよ
それで、どうして僕なんですか?」


「だってさー、空はヤマトと付き合ってて
俺がその気じゃなくてもヤマトに悪いだろ?

ミミちゃんじゃ本気で受け取られそうだし
ヒカリなんて兄妹で緊張感すらないから…


だからお前を選んだ」





なんという消去法。


「他に選択肢は無かったんですか?」

太一さんの女友達はミミさんや
空さん以外にも居るはずなのに…。



「あっただろうけど光子郎なら
引き受けてくれそうだからな!」



先輩後輩だから?
僕が太一さんを尊敬しているから?


断りづらい僕を選んだんでしょうか…




「本当に僕で良いんですか?
周りの目が痛いような気がするんですが…」





…僕とあろうが、変な事を考えてしまった。


街中で太一さんと恋人繋ぎして…とか。

何考えてるんだ僕は…




「それなら大丈夫だ!ほら」


ジャジャーンと鞄から取り出した物は

肩ぐらいの長さまであるウィッグと
女性物の洋服。しかもスカート…。



「これ被って、この服来たら
光子郎だってそれらしく見えるって!」


「僕に女装させる気ですか?」

「おう!」




…おう!って元気よく答えられても。


僕より太一さんの考えの方がどうかしている


「な!光子郎だったら出来るから…頼む!!」



どうしよう…。

断ったら太一さんに嫌われないかな。
けど引き受けたら僕は……、女装…。



でも、本当に太一さんが
僕に頼っているなら…。


「…解りました。
けど練習は一回だけですよ!」

「ありがとう光子郎ー!
じゃあコレ、明日着てくれよな!!
昼過ぎにお前ん家、行くから。」


太一さんが持ってたウィッグと
服を押し貸しされて…

とりあえず自分の鞄に詰めた。



どこで手に入れたんだろう…、ほんと。

もう太一さん帰っちゃったし。




僕も帰ろう…













――…


家に帰って、自分の部屋に入り鍵をかけた。

いつもなら、ただいまって
お母さんに言うのに…申し訳ないです…。


鞄を開けて…
さっき詰め込んだ物がコンニチワって。



…着てみようかな。

ああ、僕…変態みたいだ。



一つ一つ、着てみた。




…サイズぴったりだ。





「光子郎はん、帰ってきましたん?って誰や!?」


「わわっ、テントモン!?」



パソコン付けっぱなしでデジタルワールドと
交信出来るようにしていたから

モニターに映るテントモンが
とてつもなく驚いている。


同時に僕も、この姿を見られてビックリ。


「光子郎はんでしたか、何してますん?
誰か解りまへんでしたわ」


「て、テントモン…っ
これには深い訳があって…」


「なんや、罰ゲームでっか?」


「まぁ…、それに近いっていえば
そうなんだけど、太一さんが…。」



あ、名前出しちゃった。




「はー、太一はん変態でんなぁ。
けど光子郎はん、案外似合うてますで」




そんなフォロー要らない(涙)



「誰にも言わないで下さいよ!」


「大丈夫ですって、安心しなはれ」


「ありがとう…、今日はもう電源落としますね
他のデジモンに見られたら…あれなんで」


「光子郎はんも大変やなぁ…
ほな、また!」



テントモンとの交信を終えて
パソコンの電源を落とした。


…着替えよう。そして寝よう。




僕はパジャマに着替え
気疲れしたので、はやく寝ることにした









―…翌日。


あまり眠れなかったような気がします。

ちょっと以上にドキドキして
また変な事頭に浮かんで…。

ああ、どうしよう、今日はこの服を着て
外に出掛けなきゃいけない。


…恥ずかしい


しかも太一さんに、その姿を見られるなんて
考えたら頭がパンクしそうです。







お昼過ぎ、
僕は準備出来ました。


もう…、どうにでもして下さい
というような気分です。



ピンポーン…



あ、来た。たぶん太一さんだ。


ドアを開ける前にレンズ越しに
太一さんと確認し、恐る恐る戸を開けた。


「お迎えに上がりました」



なんて、華やかな言葉を並べて…。
あなたは王子様ですか。


「こんにちは…」

「じゃあ、行こうか。」


恥ずかしい…

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