鋼の錬金術師

『負』の裏にある、或る『正』(後編)
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あの人を…憎んでいた……。

養父を…父を殺したあの人を…。

例え父が『国家錬金術師』で、あの人に『国家錬金術師』を殺す理由があったとしても……。

でも…今、それが――――――…。



『負』の裏にある、或る『正』   −後編−



 テントに入ると、案の定傷の男(スカー)は『修練』をしていた。

呆れて溜息を吐くと、私は彼の前に腰を下ろした。



「ちょっと、一旦止めてくれる?…包帯…取り替えるから…」

「………、…何故だ……」

「……何故って、貴方一応怪我人なのよ。判ってる?……それなのに、何度注意しても聞かないじゃない…。…本当はまだ、怪我が充分に治ってないんだから、大人しく……っ!?」



包帯を巻き直す私の手を、傷の男(スカー)が止めた。

紅い瞳と目があった。

思わず視線を反らすと、傷の男(スカー)は言った。



「己れを、憎んでいたのではないのか…」

「!」

「お前の父を殺した己れを……」

「……父を殺した貴方を、許す事は一生出来ない…。…父は、私にとってたった一人の大切な人…。……だけど、それにずっと拘っていても、父はもう…」

「…………、そうか……」

「……貴方を許す事は出来ない…。でも…、貴方を憎み続けても…きっと…父は喜ばない…」

「………」

「…だから…、……っ!?」



不意に頭に重みを感じて思わず顔を上げると、また紅い瞳と視線が合った。



「おかしなヤツだ…」

「お…おかしなヤツって…、ちょっと…」



そう聞き返そうとしたけど、それは途中で『ざわめき』に遮られた。

外が…、何やら騒がしい……。



「何…?」

「………、…お前は此処に居ろ…」

「えっ?あ、ちょっと!」



傷の男(スカー)が出て行くと、誰かの叫ぶ声が聞こえてきた。


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