鋼の錬金術師
□『負』の裏にある、或る『正』(後編)
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あの人を…憎んでいた……。
養父を…父を殺したあの人を…。
例え父が『国家錬金術師』で、あの人に『国家錬金術師』を殺す理由があったとしても……。
でも…今、それが――――――…。
『負』の裏にある、或る『正』 −後編−
テントに入ると、案の定傷の男は『修練』をしていた。
呆れて溜息を吐くと、私は彼の前に腰を下ろした。
「ちょっと、一旦止めてくれる?…包帯…取り替えるから…」
「………、…何故だ……」
「……何故って、貴方一応怪我人なのよ。判ってる?……それなのに、何度注意しても聞かないじゃない…。…本当はまだ、怪我が充分に治ってないんだから、大人しく……っ!?」
包帯を巻き直す私の手を、傷の男が止めた。
紅い瞳と目があった。
思わず視線を反らすと、傷の男は言った。
「己れを、憎んでいたのではないのか…」
「!」
「お前の父を殺した己れを……」
「……父を殺した貴方を、許す事は一生出来ない…。…父は、私にとってたった一人の大切な人…。……だけど、それにずっと拘っていても、父はもう…」
「…………、そうか……」
「……貴方を許す事は出来ない…。でも…、貴方を憎み続けても…きっと…父は喜ばない…」
「………」
「…だから…、……っ!?」
不意に頭に重みを感じて思わず顔を上げると、また紅い瞳と視線が合った。
「おかしなヤツだ…」
「お…おかしなヤツって…、ちょっと…」
そう聞き返そうとしたけど、それは途中で『ざわめき』に遮られた。
外が…、何やら騒がしい……。
「何…?」
「………、…お前は此処に居ろ…」
「えっ?あ、ちょっと!」
傷の男が出て行くと、誰かの叫ぶ声が聞こえてきた。
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