長編・第一部
□第二章 正体
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謎の抗体『X‐naught』を奪り還えせ!
第二章 正体
喫茶店『HONKY TONK』。
学校から直接、三人は此処へ来た。
此処ならば誰に気兼ねする事もなく話し合う事が出来る。
そして、話し合われる事はたった一つ…。
何故雪が、連れ去られようとしたのか、である。
「先刻いきなり匿名の電話が掛かってきて、『桜羅雪は今日休む』って一言言ったきり切られて、心配になってこいつ等をやったら案の定…。早めに手ェ打っといて正解だったな…」
「ありがとうございます、マスター…。私も、何が何だか判らなくて……。突然あの人達が校門前に現れて…」
「しっかし、何だったんだろうね…、あの人達…。雪ちゃんの知ってる人達じゃ…ないんだよね?」
「はい…全く……。あの『鷹官』という方が仰っていた、『主人』という方がどなたなのか、それがわかれば、或いはどうにかなったかもしれませんが……」
「…………」
四人が暫く黙りこくっていると、カランと扉の鐘が鳴る。
「いらっしゃい…。…夏実ちゃんか…」
「こんにちはー。……あれ?どうかしたんですか?」
店の雰囲気がどことなく暗いのに気付き、夏実が波児に尋ねると、波児は事の詳細を告げる。
夏実はどうすればいいのかわからず、黙り込んでしまった。
「あ、夏実ちゃん、気にしないで。私は大丈夫だから…。それよりも、そろそろ着替えなくっちゃ」
そう言って席を立つと、雪は夏実の手を取って奥へと入って行った。
「……」
蛮は或る事を考えていた。
それは、鷹官のスーツに付いていた、記章バッジ。
それに付いていた紋章に見覚えがあった。
「波児…、ちょっと奥、借りるぜ……」
「あ?……ああ…」
蛮は店の奥にある部屋へと消えた。
その部屋は『よろず屋 王波児』の情報収集室と言っていいだろう。
あらゆる分野の情報が得られる、何とも便利な部屋だ。
「なんか真剣な顔してたね……」
「雪ちゃんの事だからだろ?」
「………そっか…」
やがて夏実と雪が着替えてやって来る。
蛮がいない事に気付いたのか、雪はキョロキョロと店内を見回す。
その時丁度蛮が奥から戻って来、雪に尋ねた。
「雪…、最近病院行ったか?」
「え…?病院…ですか?行きましたけど……」
「…そうか…。……判ったぜ、奴等の正体…」
「えっ!?それ本当?蛮ちゃん!」
「……」
蛮は話し始める。
鷹官達が何者なのかを……。