長編・第一部

第五章 理由T
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謎の抗体『X‐naught』を奪り還えせ!

第五章   理由T



 思っていたより簡単な依頼だった。

屋敷の中に忍び込み、俺等を見つけてはやって来る、うざってェ奴等を蹴散らしながら家主のいる奥の部屋へ行くと、案の定ご丁寧にも一枚のCD-ROMを手にして銃を構えてる家主が居た。



「おじさん、悪いけどそのCD-ROM、返して貰うよ!俺達の依頼人さんの物なんだからねっ!」



そう言って銀次が飛びかかる。

銃を発砲してくるが、俺達にはそんなモン、大して利きゃしねェ。

銀次が家主を取り押さえて、CD-ROMを奪還する。

何かいろいろ喚いていやがったが、脅し程度に壁を殴って崩したら静かになった。

そのまま俺達は窓を突き破って屋敷を出る。

まぁ、途中屋敷を見回っている連中に会ったが、難なく突破して屋敷を後にした。



「結構、楽な仕事だったね、蛮ちゃん。これで一千万も貰えるなんて、……そんなに凄いモノなのかなぁ…、このソフトウェア…」

「さぁな…」

「……ま、いっか。…早く帰って、雪ちゃんに会いたいなぁ〜」

「……ったく…、昨日会ったばっかじゃねェかよ…。それでなくても、殆ど毎日会ってるってのによ…」



片手で煙草を銜えて火をつけると、銀次が俺を見て笑ってやがる。



「またまた〜。蛮ちゃん素直じゃないんだからなぁ〜」

「うるせェ!んな事言ってると、放り出すぞ!!」

「えーーー!!そんな事したら、こっちまでお陀仏だよ〜〜〜…」

「ケッ…(……………それにしても、あん時感じた妙な胸騒ぎみてェなのは、何だったんだ……)」



あの屋敷に入る前に感じた胸騒ぎ…。

………まさか……。

そんな事を考えていると、仕事用の携帯が鳴る。

俺の変わりに銀次が出た。



「はいはーい、依頼成功率ほぼ100%、奪還屋『Get Backers』でーっす!ご依頼ですか〜?………って、あれ…?波児…?どうしたの?」



どうやら相手は波児らしい。

なんだ?

珍しいな、あいつが電話してくるなんてよ…。



「え…?何?ゆっくり言ってよ!うん…うん。…………………えぇっ!」

「おい、銀次。波児のヤツ、何だって?」

「…………うん…、……わかった…。…すぐ、戻るよ……。…じゃ、ね…」



そう言って銀次が通話を切る。

そのまま、暗い表情で話し始めた。



「蛮ちゃん……」

「あ?」

「………雪ちゃんが………、来てないんだって…」

「何!?」

「いつも学校の帰りにバイトに来る筈なのに、家に電話かけても、携帯に電話かけても出ないんだって……ねぇ、まさか、雪ちゃん…!?」

「…………そう考えるっきゃねェみてェだな…。アイツが無断で休むとは思えねェ…。……銀次、ヘヴンのヤツに連絡しとけ。今までに集めた資料、全部持って今すぐ『HONKY TONK』に来いってな…!」

「………わ、わかった!」



よりによって学校帰りを狙いやがるとは…。

あん時の妙な胸騒ぎは、コレかよ…。

同じ手は使って来ねェだろうと踏んでたが、油断しちまったみてェだな―――…。



「飛ばすぞ、銀次!」

「うん!!」



俺達は急いで『HONKY TONK』へ戻った。
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