長編・第一部
□第六章 抗体の発見者
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謎の抗体『X‐naught』を奪り還えせ!
第六章 抗体の発見者
『機密物質安置所』。
プレートが付けられた『鷸坂和臣邸』地下施設の一室。
此処に、『新種の抗体』は冷凍保存され、安置されている。
解凍された抗体は厳重にケースに入れられ、実験室へ運ばれる。
実験室は、地下の最奥部にあった。
幾重ものパスワードを設置し、限られた者だけしか入る事は許されない。
パスワードを知っている者は、和臣の許したほんの一握りの人物のみ…。
翌朝。
『HONKY TONK』では、雹からの情報を元に、蛮と銀次は地図での場所の確認や『新種の抗体』について調べていた。
だが……。
「クソッ!」
「ど…どうしたの?蛮ちゃん…」
蛮が苦渋の表情でノートパソコンの画面を見つめている。
「先刻から何回やっても、『鷸坂総合病院』の研究棟のメインコンピューターにアクセス出来ねェんだよ…」
「え?…メインコンピューター…?」
「新種の抗体なら、まだ公式発表はされてねェ筈だろ…?だから、病院の研究棟のメインコンピューターにあるデータバンクだったら少しぐれェは情報が見れるだろうと思ってハッキングしてみたんだが、エラー画面しか出てこねェんだよ……」
「…へ??」
あまり理解出来ていない銀次をよそに、蛮が悔しそうに荒々しくキーボードを叩く。
“抗体”と言うくらいだから、抗原や病原に対するものであろう。
だが性質がどういうものなのか、それは全く見当がつかなかった。
「クッソー…、なんかねェのか〜〜〜…」
蛮が頭をガシガシとかいていると、突然銀次が叫んだ。
「判ったーーー!!」
「「「!!」」」
その場に居た全員が銀次に振り返る。
「ビ、ビックリさせんじゃねェ!………で、何が判ったんだよ…」
「MAKUBEXだよ!MAKUBEXに頼んでみるのはどうかな!?MAKUBEXだったらきっと、その『新種の抗体』が何なのか、突き止めてくれるんじゃない?パソコン強いしさー」
「そっかー、彼なら問題なく突き止められるわよ!銀ちゃん、珍しく頭の回転早いじゃなーい」
「…そんなぁ〜〜〜…、ヘヴンさん…『珍しく』って、酷いよぉ〜〜〜…」
「あ…ごめんごめん、銀ちゃん…」
ヘヴンの何気ない一言に傷付く銀次。
だがその横で蛮はそれもそうだ、と呟いた。
「……借りはあんまし作りたかねェが…、んな事も言ってらんねェしな……」
「でしょう?んじゃ俺、MAKUBEXに連絡取ってみるね〜」
銀次からの電話にMAKUBEXが出ると、すぐさま蛮が携帯を取って説明し始める。
「っつー訳でよ…。あんまり借りは作りたくねェんだが…今回ばかりは頼むぜ…」
『…判りました…。【新種の抗体】というものがどんなものなのか、誰が発見したのかが判ればいいんだね?』
「ああ…、あとそれが今、何処にあるのかもな…。大体見当はついてはいるんだがよ…」
『判り次第、届けるよ。少しだけ、待っていてもらえる?』
「ああ、頼むぜ……。……………OKだとよ…」
電話を切った蛮がそう言うと、ホッと安堵する一同。
「よかったぁ〜…。……でもさぁ、本当に『新種の抗体』って何なんだろうね…」
「さぁな……。ただ、十三年前にもその抗体の実験が行われていたって、雪の兄貴が言ってた…」
「…?…何で雹さんがそんな事知ってんの?」
「…聞いたらしいぜ、院長が話してんのをよ…」
「ふう〜ん…」
それから数十分、MAKUBEXからの連絡を待つ。
と、その時、突然『HONKY TONK』のドアベルが鳴り、荒々しくドアが勢い良く開いた。