The Kingdom of GodU

□第四章 組織の裏側
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戦争中だとは思えないとても穏やかな日だった。

長い艶のある黒髪に瑚珀色に近い緑の瞳の女性が優しく俺を見守っている。その透き通った声で奏でる子守唄が心地良くて好きだった。

額辺りを撫でる細い手はガサガサで日ごろの苦労をより感じた。幼いながらもそういうことはわかっているつもりだった。

「レイ、レーウィン」

眠りに付こうとしていた俺は必死になって目を擦り彼女を見る。その顔が想像以上に真剣で怒られるのかと緊張した。

慌てている息子を安心させるように頭を撫で、その左手を離した。いつも身に付けている金細工の腕輪、その頃の俺は煌めくそれが欲しいとよくねだっていたものだ。

「母さんこれから遠くに行かなきゃいけないの。隣の家の人が面倒見てくれることになっているんだけど大丈夫ね?」

「……うん。」

本当は一時も母から離れたくなかったが我が侭を言ってはいけないこともわかっていた。瞳から流れる水は困らせてしまうこともわかっていたのに止まらなかった。

しばらく考えていた母は手首から骨が変形するのではないかと思うくらい力を込めて無理矢理腕輪を外すと俺の腕に通した。

『絶対に人に見せてはダメよ』と言われていた。
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