The Kingdom of GodU
□第五章 彼の玉座
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扉の向こうには大勢の紳士淑女、やっと歩けるようになった幼児から老人まで年齢はバラバラだが皆着飾っていた。
いくつかあるテーブルの上には山ほど食べ物が置いてあり自由に取って良いようだ。イリュシェの文化形式なのだろう。
先ほどの話とはうって変わってルカは他愛のない話を口走る、それに相槌を打つレイに私は驚いた。
お皿を取りに行こうとした矢先、いきなり周りが騒がしくなった。気にせず手を伸ばすと目の前に腕が出現し、皿を掴むと私に突き出した。
「ごきげんよう、お嬢さん。」
聞き覚えのある喉太い声が斜め上から聞こえて反射的に見上げると、先ほどの話の主役の顔が視界いっぱいに広がる。
声にならない悲鳴を上げる寸前で前に出てきた黒髪の青年の背中に匿われ、反動で体制が崩れそうになったところをルカが後ろから力強い腕で支えた。
そのやり取りは衆人環視され、先ほどとは別の騒がしさが会場を包む。大統領は肩をすくめ、周囲の人に軽く微笑んだ。ただそれだけで傍観者は和やかになる。
「ずいぶんな嫌われようだね、私は君達に何かしただろうか?」
少し苦笑いを見せると彼は皿を定位置に戻した。
青年の紫瞳が鋭くなるにつれて再び騒がしくなる。それに対し彼の態度は船の中とは違い泰然自若だ。
「私はお嬢さんの名前を聞こうと試みただけだ。まだ聞いていなかったからねぇ。」
「貴方には教えたくない。」
すかさず出た本音に驚き両手で口を塞ぐ。男は私の態度に怒ったのかその感情を侮辱の笑みで表した。
「オーウェン=アイザック=キスリングの娘と呼ばれたいなら別にいいのだがね。」