The Kingdom of GodU

□第七章 歴史から消えたお姫様
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宴が終わり男は悠々と広い廊下を歩む、行き着く先は王と后が使っていたと言われる私室だ。

ボディガートと部屋の前で別れて一人で頑丈な扉を開く。そこには彼の妻と一人娘がいた。

妻は冷酷な笑みで、娘は震えながら出迎える。男は微笑んだ、妻と同じ笑い方で。

娘はビクッと大きく震えると腰まである長い髪で身を守るように体をすぼめ、うつ向きになった。両親はまた微笑む。

「イリュシェの血統は“王子”だったのね。あの冷たい瞳、気に入ったわ。」

女は夫に向けて話していたが脅えている娘の方向を向いていた。男は頷き娘に向かって話す。

「落ち着いたら王子の伴侶を女性の中から選抜しなくては、王族の生き残りの伴侶には最も高貴な血を受け継いでいる者が似合うと思わないか?ロゼ。」

ロゼと呼ばれた少女は再び脅えながら同意のために小さく頷いた。それを見て二人揃って高笑いする。

しかし女の声がいきなり止まり空気が張りつめた。夫が口を開こうとしたとき話し始める。

「あの娘がいずれ邪魔に入るわ。……本当に親子揃って邪魔な存在。ロゼ」

「……はい」

少女の瑠璃色の瞳は震えながら母の瞳に合わせた。暗い深海のような瑠璃色の瞳、それにまた恐怖を感じる。

「絶対に叩き堕とすのよ。……返事を仰い!」

「はいっ」

再び大人が高笑いする。その中央で儚げな少女は静かに震え続けた。
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