The Kingdom of GodU

□第十一章 聖水の中で眠れ
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大統領から振る舞われた紅茶は甘ったる味がした。前回のパーティーから今日まで毎日投与されていた毒薬の味だ。

王族の者が暗殺から逃れるために馴れさせられていた毒の中でも即効性があり毒性の強いもの。俺はパーティーの翌日の朝食に毒を盛られ、二時間後に解毒薬を投与された後も一週間生死をさ迷った。

だが抗体のない人間には二十分ももたないと言われている、皮肉にもこういう面で王族であることが確定したのだ。

解毒薬がなくとも回復できるようになったが数日間妙に体の中心が暑くなる。正直周りの者が倒れていくことに気を留めていられるほどの余裕はなかった。しかし唯一彼女だけは俺の視界に映った。

少女は紅茶を眺めて立っていた。コーラルの紅茶には入っていなかったのだと顔を綻ばせた瞬間、ティーカップと共に金色の波打つ髪が流れるように床へと落ちた。

俺は無我夢中で彼女に駆け寄り、名前を呼んだ。ラベンダーの瞳は溢れるほどの涙を浮かべてていて、一度だけ瞳孔が大きく震えた。ゆっくりと瞼が落ち頬を流れる熱い水が頬を伝う。俺はぼんやりと見ていることしかできなかった。

ざわめく観客を掻き分けて出てきたのは碧色の髪の女性。俺の腕の中にいる娘の顔色を見ると更に血相をかいて名前を連呼した。もちろん返答は一切返ってこない。

少女の顔は気味が悪いほど穏やかで青白い。体の中心は燃えるように熱いのに手先が徐々に冷たくなっていく。体温を低下させないように手を強く握ったが、自分の温度が奪われてゆくばかりで一向に回復する見込みがなかった。

周りを見るとベルベットの衣の娘が床に倒れている。その女の傍らにはルカ、彼は瀕死状態の少女達とは違い、頭を押さえて座り込んでいた。

微かに息をしているのが唯一の救いだが、時間と共に小さくなっている。その音が途絶えてしまうことが恐ろしく感じた。




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