The Kingdom of GodU

□第十四章 かけがえのないもの
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十数年前まで、私は城に勤めていた。戦前、戦中、戦後と移り変わる時代の中で唯一変わらない事象は、噴水の周りには毎年必ずラベンダーが咲くことくらいだろう。

真の主の元へ嫁いだ姫に、初めて会った日も花が咲いていた。あの日は後に私の妻となった幼馴染みが姫に無礼を働き、大変な一日だった。

その一年後には主は亡い、敵国から来た女王が毎年飽きずに花を踏み潰していたのを記憶している。

娘から懐妊の報告があった時も、王朝が倒れた時も花はそこにあった。




過去の栄光はどこにもない。日の光も届かない冷えた牢屋、私は長く生きすぎたようだ。




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