The Kingdom of GodU

□第四章 組織の裏側
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「……モテますね。」

少し前を歩いていた彼の足がピタッと止まる。両親とは違い反射神経が鈍い私は彼の背中に衝突した。

大した衝撃はないがその背中から伝わる複雑な感情が私を弾き跳ばす。

瞳はまがまがしい光を放っていて無言だが咎められている気分だ。私は生唾を飲み込んだ。

「……もういいよ。」

思いもしない言葉に反応が遅れる。ため息混じりに彼の口から出た言葉が理解出来ずに立ち尽くしていた。

その間男は容赦なく前進して行ってしまう。三拍ほど置いてやっと我に返り慌てて後を追った。

走って横に並び青年の顔を覗き込む。彼の表情は無に等しいがなんとなく伴う感情が切ないものに感じた。

宙に揺れる手の平が何処かに行ってしまいそうというよくわからない不安が私に手を伸ばさせる。

触れる温もりは暖かくてほんの少し安心した。その直後逃がさないと言うかのように強く握られ戸惑ったが、最大限の力で握り返した。
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