The Kingdom of GodU

□第五章 彼の玉座
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「彼は第一被害者だ。」

不意に横から聞こえる声で視界が色付き始める。燃えるような緋色の瞳が怒りの炎を灯していた。

「あの戦争はアナトリアの王族姉弟が起こした喧嘩が原因だと最新の研究で解析されている。キスリングは戦争の合図のようなものだったとも。」

冷静だった。その中に感じる静かな怒りはおそらく民を無知にさせた国の主に向けられている。

大統領は一瞬怯んだがすぐに立て直す。大衆がまだ彼の言いなりになっていたからだ。戸惑っている者もいたが、大統領の言葉を選んだのだ。

孤立無援になった私に見方をする意思表示を口にしたことにより、傍観者の目は彼に向けられる。

驚きやお礼よりも申し訳ない気持で無言で謝るとルカは顎で私に前を向くよう指図をした。

見上げると不機嫌そうな紫の双方が私達を見ていた。声を掛けるべきか迷っているとレイは再び前を向き直して中年の男を睨む。大統領に怒りをぶつけているように感じた。

このとき今まで経験したことがない、心の痛みが私を襲った。
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