The Kingdom of GodU

□第六章 大切な人々
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「コーラルはいい子だね。」

筋道がわからない結論を言うと男は頭を撫でるのをやめた。長い間こちらを見ていた客達が未だにクスクスと笑っている。

「…見られてる。」

彼はやっと口を開いた私に安堵を吐くとその言葉に答えるように慎重な面持ちで私と向き合った。

「行動していた仲間が王子だったからかなぁ。」

そこで私は再び壇上を見る。踊り子は壇上から降りていた。玉座で足を組み、機嫌そうな顔で頬杖をついていることからかなりひどい事を考えていることが予想できる。

「ねぇルカ、……殿下は本物の王子なのかな?まだ信じられないわ。」

目線を下にして打ち明けた心の闇を察したのか彼は覗き込むようなことはせず、私の方を向いた。

「俺は何故ここに連れて来られたかわかる?」

いきなり話題が変わってしまい戸惑っているとルカは屈んで私と目線を合わせてくれた。

「赤褐色の瞳だからだよ、これは御三家の内の一家の特徴。他の人も王家の特徴があるから連れて来られた。」

彼の意図する内容が解らずに適当に相槌を打つとルカはそれを察したのか言い含めるように話した。

「つまり“似ている”だけで所詮“まがい物”なんだよ。けれどもレーウィン様の場合は違う。」

そこではっと気が付く、肉体労働には似合わない豪華かつ繊細な彼の腕輪のことを。老人が腕輪を観察した後に王子だと断定されていた。

「あの腕輪はイリュシェの王族の者の証なんだ。王子がしているのはティーシャ后の腕輪。男の腕には細すぎて、唯でさえ簡単に外れないように作られている腕輪が肉体に食い込んでしまったんだ。」

会場に再び音楽が鳴り始める、おそらく次の団体の用意が出来たのだろう。その騒音に紛れるように会話を続けた。

「でもお后様が近くにいた子供に渡したのかもしれないじゃない。」

「それなら食い込む前に壊している。あの姿が証明してるって言えるんじゃないか。」

そこで私達の会話に沈黙が訪れた。外野は騒がしいくらいなのにやけに静かに時は流れる。そんな時だった。
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