The Kingdom of GodU

□第六章 大切な人々
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壁側を向いていた私は後ろから衝撃を受けてルカの真横の壁に激突した。何が起こったのか解らずルカは呆然と立ち尽くしている。聞き慣れた声が頭の彼方辺境で謝っている気がした。




「ごめんなさい、大丈夫?」

歯をくいしばって壁とにらめっこをしていたが体のすべての細胞がその声に反応していた。

懐かしさ故に無理矢理振り向くと中年の貴婦人がハンカチを差し出している。

ほどよく日焼けした肌は健康的で指先まで逞しく、美しい。緑の髪は肩に届くか否かの長さでサファイアのイヤリングが髪の間で揺れていた。

「え、ママ?……そうか。」

緑の瞳は光の加減で青に近くもなる。すべての要素が母親であることを表していた。大統領が船で連れて来たと言っていたが、今は母をあまり信用できなかった。

「なんで……貴族だって黙っていたの?」

親に会えた安心からだろうが我儘が溢れてくる。そんな自分も嫌になる。

ルカは私の言い分を聞き彼女に会釈をした、戸惑いながらも軽く頭を下げて再び私に向き直す。しかしいくら待っても返答はなかった。

「なんでも良いから答えてよ。」

このままの状態が続くと両親のことが嫌いになりそうで、怖かった。懇願する私に対して相手の顔は今の空気に合わない仮面で覆われていた。
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