The Kingdom of GodU

□第六章 大切な人々
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「貴方は誰?」

唐突な返事に理解出来ずに思考が停止する。普段口にしている品のある言葉ではなく母の声で発せられた砕けた言語に違和感を覚えた。

「だいたい私と貴方は同じくらいの歳だよ?ふざけないで。」

腰に手をあてて胸を張り、堂々と発言する中年の女性。若く見えるとはいえさすがに十六歳には見えない、そしてコーラルもまた中年ではない。

驚いて彼女のことを覗き込む、瞳の中に偽りを探したかったのだ。緑の瞳、しかし片方だけ碧色の瞳。それに違和感を覚えた。

「あの……私はコーラル=リオルドです、貴方のお名前は?」

「私はリーベラ=アーウィング=シュトラウス。」

同姓同名なのだろうか、そう思い始めたとき彼女は呟いた。

「それより私の両親知らない?ママは私と顔同じで桃色の髪と瞳、パパは緑で二人とも三十代はなんだけど。」

私達は耳を疑った。見るからに三十代の女が三十代の両親を探している。ルカも困惑しながら彼女に尋ねた。

「失礼ですが貴方の年齢は?」

「十五。困ったなぁ、私陸に降りてお祖母様の家に行く筈なのにいつの間にかお屋敷にいて知り合いがいないなんて。」




今なら倒れられる。彼女は母に間違いない、皮肉にも大統領から貰った母の過去の情報と一致するのだ。

しかし今の彼女は母ではない。こういうのを記憶喪失、もしくは幼児退行というのかもしれない。

「さっきはごめんね、最近右目が見えにくくて遠近感覚がとれないんだ。」

色素が薄くなっている右目は碧色をしている。どんなに明るい場所にいても緑色の瞳が青みがかっているのはそのためのようだ。男性は何も言わず唯愛想笑いを浮かべて固まっている。

不思議と冷静だった、大切な人の惨状を見てある人に対する怒りだけが沸々と湧き出てくる。

彼女はそんなことも知らず笑いながら言った。

「お友達ができて良かった。」
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