The Kingdom of GodU

□第八章 初めての恋
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パーティーから数ヶ月、王族の候補生は急激に減少した。人数が減ったことにより、大半の候補生とは顔見知りになれたと思う。

そんなある日、城に残っている全ての人に夜会の招待状が届いた。何のためのパーティーか記載はなく、数日後の夜に広間に集まるようにだけ書いてある簡素なものだった。

ルカと相談して出席という文字を丸で囲み、使用人に渡す。お互いの自室に帰る途中、私は彼と別れて庭を散策し始めた。

この城を訪れた時に咲いていたラベンダーは今が最盛期。うつ向き、鎖骨付近にぶら下がっている薄紫の水晶を握り締めた。

波打つ長い金髪が包み込むように肩にかかる、瞳を閉じて同じ髪色の父と弟の面影を追った。私と母を探している二人の姿が脳裏に浮かび、胸が痛くなる。

心は日々弱くなっている。ママが記憶を失ってしまったという事実が私の甘ったれた精神を苦しめ、不安で胸がいっぱいになった。

一度息を吐いてから宮廷の外側を無造作に歩き始める。不意に初めて会った時のルカの言葉と、葡萄のような艶のある黒髪の青年が固く瞳を閉ざしている姿が頭を横切った。

私は大きく首を横に振り、一度立ち止まり深呼吸をしてから結論を思い起こした。


イリュシェ共和国の最後の王朝の生き残り、それが船員のお兄さんの正体だった。彼の姿は数ヶ月前のパーティー以来、一度も見ていない。

精悍な外見と落ち着いた雰囲気がとても魅力的で、ずっと思いを寄せていた。本性を知ったときは恐怖で身動きが取れず、何度も息を飲む瞬間を味わった。

『私は家族のような存在を求めて彼に甘えていただけ。』そう思うのが一番自然で自分が安全に暮らす道だ。

ただの知り合い……私は数ヶ月掛けてこの結論を導き出し、納得した。
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