The Kingdom of GodU
□第九章 胸に秘める思いは
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数時間後、男の目が開いた。虚ろな瞳は私に焦点を合わせると少しだけ鋭くなる。
「どうやってこの部屋に入ったんだ?」
呟くような声は艶っぽく耳に響いた。密着しているため伝わるのではないかと心配になるくらい、私の心音はうるさかった。
そんな不安を少しでも解除するため、彼の五感を聴覚に集中させようとした。その頃には今議題になっている質問内容まで忘れている始末だ。
とりあえず今日の出来事全てを話す。思いとは裏腹に私の話は拙い言葉を並べている赤子ような口調だった。
しかし彼は何も言わずに黙って聞いていた。単に口出しする気力がまだなかったのかもしれない、まだ彼の体は熱かったからだ。
「……終り?」
全て話し終り、顔を上げると先ほどより少し険しい顔があった。軽く頷くと盛大にため息を吐く、数時間前から後ろに回っていた腕がより締め付けてくるような気がした。
「お、王……」
「その呼び方やめろ。」
背中にあった青年の右手が頬と顎を固定する、あまり見ていなかった紫の瞳が視界いっぱいに広がった。熱のため潤っている冷たい紫色は泣きそうで、痛々しい。
「いつもそうだよな、妙な所で礼儀正しい。言いたいこと言って、他人が心配しているのに構わず行動をするくせに。」
心が痛んだ。私の欠点は空気が読めないこと、それを好意を持った人に言われるのは誰だって傷つく。そして昨日までの私なら、ここで好きではなくなっていた。
嫌われた……そう思うと悲しくて、謝罪の言葉が思うように出てこない。もどかしい気持が溢れないように唇を噛み締めた。
一方男の冷たい瞳は怒りで燃えているように見えた、私が何も言わずに泣きそうな顔をしていることに苛立ったのか体が震え、顎に置かれている手に力が入る。
男は一回瞼を閉じて大きく息を吐いた、感情的な憤りを一時的に沈めるために行なっているようだ。少し冷静さを取り戻したのか、彼は目を瞑ったまま口を開いた。