The Kingdom of GodU

□第九章 胸に秘める思いは
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「答えはわかったの?」

唐突に掛けられた言葉は脈絡のない質問。記憶にないものに頭を悩ませていると、男はゆっくりと呼吸を整えて再び声を掛ける。

「なぜ俺は感情を隠しているのか、この城に来たとき聞いてきただろ?」

目を開けた男は少し辛そうな表情をしている。なぜそんな質問をしてしまったのだろうと後悔した。親と別れて生きていくことがどれだけ大変だったのか、何不自由なく呑気に暮らしていた私には分かる筈もない。

「ごめんなさい」

うつ向きながら蚊の鳴くような声で言った。私の反応ですべてを察したのだろう、うつ向いていた私の顔を顎に置かれていた指が上げ、彼の顔が近づいてきて止まった。




唇に暖かく柔らかなものが当たっている、驚きのあまり硬直した。彼は反応を確認すると顔を離した。

「だから嫌なんだ。」

そう耳元で囁くと私を抱き上げて歩き出した。部屋の奥にある柱まで行くと、私が入ってきた扉を開き、何の前触れもなく扉の向こうの床に落とす。

「帰れ」

見下ろす影から紫色の瞳が睨む、あまりにも鋭い光に息を飲み込んだ。ゆっくりと辺りが闇に包まれていくのをただぼんやりと見つめることしかできなかった。
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