The Kingdom of GodU

□第九章 胸に秘める思いは
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暗い道の中をただ一直線に歩いた。多少月光が入ってきていたので、足元が見えるのだけが幸いだ。頭がぼんやりして何も考えたくない、彼の言葉が何度も児玉して胸に刺さった。

「でもね、私は…」

唇に触れてから言葉が掛けられるまでの数秒間、思考が停止してしまったあの一時がものすごく幸せに思えた。心地よいとどこかで感じていた。


バタンッ


前を見ると小さい板が道に落ちていた、行きに発見した肖像画だ。釘が緩んで床に落ちてしまったのだろう、起こしてみると額が大きく欠けてしまっていた。

(直せるかな…)

私達の関係みたいに、この額を直せないだろうか。これを直してまた此処に来れば、謝る機会が出来るかもしれない。そう考えると持ち帰らずにはいられなかった。




石板の扉を開くとすっかり夜になっていた。裏庭から表にまわり、トボトボと庭を歩いていると男の人が走ってきた。

「コーラル!」

顔を上げるとそこには赤髪に赤銅色の瞳の青年が息を切らして立っていた。おそらく部屋にいない私を心配して探しに来てくれたのだろう。

「ルカ?」

憤りを見せていた表情は私の顔色を見ると急に優しくなった。彼は私の目元を擦る、知らない内に涙が流れていたようだ。

「ルカ、私どうしよう。…ィに嫌われちゃったよぉ。」

それだけ絞り出すと火がついたように泣き出した。胸が痛かった、心臓が張り裂けてしまった方がマシだと思うくらい辛かった。

ルカが子供をあやすように私をなだめようとしたが、私は聞く耳を持たず、ただ泣きわめいた。




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