The Kingdom of GodU

□第十章 暗闇は光を包んで
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大統領は重たそうな体を猛スピードで動かしていた。今夜のパーティーに必要なものを揃え終わり、彼の妻を探し回っていたのだ。

ふと庭に目を移すとラベンダー畑に家族が佇んでいる。妻はラベンダーをむしり取り、娘は相変わらず不安そうな顔をしている。

「メイジァ、準備出来たぞ。」

返事の代わりにブチッとラベンダーの茎が切れる音が何度も響いた。小さな紫色の花を散らして彼の妻は微笑む。

「王族に似ているかどうか知らないけど、いい気になっているのも今の内ね。本当に親子揃って邪魔だったわ。」

冷たく響く声には積年の恨みが込められていた。彼女の夢は世界一の権力者になること、少女時代も今も変わらない。そしてそれが今夜叶うのだ。

異常な両親を横に気だるい体を奮い起たせ、少女は必死で考えた。今までの経験上両親の標的になっている人はもちろん、周りにも影響が及ぶことをロゼは知っている。

そして今回は今まで以上に卑劣な手段を使おうとしているのが肌身で感じられる。誰一人傷付けずにいられる方法はないかもしれない。しかし罪のない人を危ない目に遭わせたくなかった。






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