The Kingdom of GodU

□第十章 暗闇は光を包んで
3ページ/5ページ


パーティー会場に多くの人が向かう。肖像画のお披露目が先日行われたため候補者以外の一般人がほとんどを占めていた。候補生は暇を持て余している権力者や資産家の後ろ楯を得ることができ、私には数十人の人から贈り物が届いた。

単に有名な王女に顔が似ているだけで多量の貢ぎ物が届くとは……このお金をもっと社会に貢献すれば役に立つのにという考えまで浮上する。

だが、そんな人々に甘えざるおえない自分の現状も知っているため、パーティーの参加者に失礼にならない程度の服を選ぶことにした。

箱から取り出し一つ一つ丁寧に見ていくが、どれも華美で私には勿体無い。ついに最後の箱にたどり着き、私は手を止めた。

今までの箱には送り主の住所氏名、中には手紙まで添えているものばかりだったが、この箱にはそのようなものは何もない。

そっと蓋に手を置き中を覗き込むと白いワンピースに淡いピンク色の上着が付いている服があった。簡素だが可愛らしいデザインで素材も良い、真夏の夜の服装としては最適だ。

セットで贈られてきた白い靴と薄紫の小さな宝石が付いたイヤリングにも綺麗で、私はこの衣装に着替えてルカとの待ち合わせ場所に向かった。






パーティー会場に入り、入口付近で立ち止まると大勢の人に囲まれる。適当に相槌を打ちながら人を探していたが、待ち合わせしているルカではなく王子を探していた。

肖像画の件で忙しかったため少しの間だけ忘れられたが、数日前の出来事を思い出すと胸が痛む。今回のパーティーは大統領主催のため王子も出席するはずだ。

(怖い、どんな顔で会えばいいのかわからない。)

胸元にある紫水晶が揺れる。私はそれを握り、唇を噛み締めた。数分経ち少女が話しかけるまで。




「あの……コーラルさん?」

振り向くと私と同い年くらいの少女が息を切らせて立っていた。高級そうなベルベット色の服の令嬢、その瑠璃色の瞳は今にも泣きそうだ。

「え?あなた大丈夫?」

慌て背中を擦り、彼女の顔色を伺った。白い肌は異常に青白く体は熱を発している。

「……まないで。」

「?」

彼女の消えそうな声は聞き取りにくく、再び口が動いたが声を発していない。人々はざわめき始め、どうしたら良いのか途方に暮れているとあの男の声がした。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ