The Kingdom of GodT
□第九章 広いホールの大きな混乱
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『あらっ何か問題でも?』
不意に現れたのは菫色の目と優雅に波打つ同色の髪の女性、隣に青い瞳に金髪を後ろで一つに結んだ中年の男が立っている。突然の登場に会場全体がパニックに陥った。
貴族の世界で、いやこの国で知らない人は居ない夫婦がいきなり登場したのだ。
会場にまた嵐が吹き荒れる。彼女達は一人息子に向かって言った。
『誕生日おめでとう。』
『ハハハッオーウェンも十八かい?大人になったものだ。少し輝きが足りないが…まぁ今日は許してやっても良いよ。なんたって今日の主役はオーウェンなんだ。本当はもっと輝かしい服を着てくる筈だったが、今日はオーウェンにわざと負けるように控えめに着飾って来たのさ。』
真紅の薔薇をくわえたキシャル=キスリング三世の顔面に妻の右ストレートが入った。会場に低くて鈍い音が響き皆が静まった。
さすが勇者ヨニナ。
『母様ありがとうございます。』
息子、父の存在無視。顔面にパンチをくらった為、くわえていた薔薇が散ったらしく「あぁ僕の薔薇がぁ」と叫んでいるが妻子揃って無視。
そんなときにまた栗毛が喰らい付いてきた。