The Kingdom of GodT
□第九章 広いホールの大きな混乱
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『リーベラ様、綺麗です。美しいです。』
『はぁ…。それはどうも。』
カツカツ音が歩く度に響く上、この人と居るとなんだかストレスの度合いが上がりそうだ。
この坊ちゃんとは二度と会わないと思っていたのに…。
『やはりリーベラ様は神々しいです。僕より会長の隣がお似合いのようですね。』
自前の栗毛に手を当てる少年はアレックス=リン=フォード。三週間前にシュトラウス家を訪れ、リーベラをダンスに誘おうとしたところオーウェンに阻止されて震えながら逃げた男の子だ。
リーベラには好意があるらしいが、何故かまた震えている。
『その後オーウェンに何かされたの?』
『ハハハ…そんなこと無いですよ。』
リーベラに乾いた笑い声を聞かせた後また震え出す。
あの後彼は無理矢理生徒会の雑用係に任命され、監視されるような毎日を送っていた。その上双子の妹がオーウェンと喧嘩をするので止めに入るのは彼の役目になっていた。
しかしそんなことリーベラには言えない。リーベラも何かを察しつつ、何も聞かなかった。
『着きましたよ。ここです。』
薄暗い廊下を抜けて着いた場所は広い空間。眩しくて目を瞑った。