The Kingdom of GodU

□第十一章 聖水の中で眠れ
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自分の信念を曲げる理由が消えて不謹慎だが心が少し楽になった。決心は変わりもう揺らぐことはない。俺は鈍感すぎる悪魔を振り払い、会場にいる全員に向かってハッキリと公言した。

「私は“王族の末裔である”一般人です。伴侶は自分で選びます。」

そう発言した後、向きを変えて大統領とその夫人と対面した。彼等の瞳は俺の目に捕えられて脅え始めた。俺も彼女の父と同様、胸に溢れる燃えるような感情の原因はたくさんあったからだ。

王子となった日から毒薬と解毒薬を投与され続ける日々に今日の出来事、相手が独裁者だからこそ牢獄送りにならない行為の数々だ。きっと俺の天命はこの殺人鬼から権力を奪うことだと悟った。

その結論にたどり着いたとき、ふと心の中に風が吹き込んだ気がした。やはり彼女の出会いが俺を変えてくれた、彼女の存在が暴君の血を浄化してくれていたのだと。

いゃ、もっと昔からかもしれない。本当にばかげているが、前世にも彼女と出会い助けられていた気さえする。そう考えるまで俺はおかしくなってしまったようだ。

「コーラルがいるから俺は尋常な行動を取ることができた。」

会場がざわついたがすぐに静かになる、俺の体からとめどなく流れる冷酷な空気に誰もが凍りついたのだ。

「母さんには悪いけど、俺はやはり父の子だったんだ。」

青年は今までにないくらい綺麗な顔で微笑んだ。会場の誰もが動けなくなるくらい冷たい顔で。










何処かから水音が聞こえた。目を開けている筈なのに何も見えない。

しばらく虚空を見つめていると光が差し込んできて、遠くで揺らめく水面を見ている内にここは水中だと知った。

ひんやりとした世界には水の音しかない。植物はなく、白い砂浜のようなものが下にある。砂粒は普通のより少々大きくて、それが一つ一つ輝いていた。

瞼が重くなってきて徐々に視界が狭くなる。透明で美しい水に洗われて魂が浄化していくようだった。この場所で永遠の眠りに入るのだと本能で感じた。

私は美しい水に抱かれて再び眠りについた。




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