The Kingdom of GodU

□第十三章 光を求める人達
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少女の瞳は濃褐色、しかし髪と同様見れば見るほど何色かわからなくなってしまう色をしていた。

まじまじと観察する私を警戒して双子達が少女に抱きついてこちらを睨む。美しく可愛らしい二人に睨まれたことにショックを受けていると真ん中の少女はクスクスと笑った。

「二人ともお客さんに失礼でしょ?」

低めで落ち着いた鶴の一声、双子は少し名残惜しそうに彼女から離れたが警戒を緩めることなく主の横を離れようとはしない。私は姿勢を正して小柄な少女に質問をした。

「貴方は神様ですか?」

真剣な面持ちで尋ねたところ、女は目を丸くして固まってしまった。きっと予想外の質問だったのだろう、しかし何かしら頭の中の整理がついたようで丁寧に言葉を発し始めた。

「この場は私の心の世界だから、ここで生まれた世界に住んでいる貴方にとって私は神様だけど、私自身はただの人間なの。」

小柄な少女は切なそうに笑う。遠い昔に経験した辛い過去を懐かしむような哀しい表情をしていた。

一つ一つの言葉の意味を考えるとわけがわからないが、彼女は私達が信仰している宗教の女神様だ。

あたふたする私をよそに女神は急に真剣な顔つきになった。同時に羊のメーさんが膝の上に乗ってくる。

「今の話は置いといて……貴方は運命に背いて死を選ぼうとしました。なので今一度選択肢を与えましょう。」

女神様は選択肢を仰った。その凛とした声と羊のベルが重なり合い、頭が割れるように痛くなる。

頭の中にある開かずの間がこじ開けられるような感覚がして、私という器から魂だけが弾かれた。





目覚めると白い靄がかかった空間にいた。少し肌寒くて、妙に明るい部屋の中にいた。

周りにはビー玉ほどの小さな玉が浮かんでいて湖はない。起き上がり近くにあった玉を手に取ると、桃色の髪の乙女が席に座って食事をしている情景が映る。

覗き込もうと試みると玉は私の額へと吸い込まれ、私の目の前に玉の中にあった情景が広がった。

机の上には立派な宮廷料理が並べられていて向かいの席には長髪の黒髪を後ろで結わえた薄青の瞳の青年がいた。

彼の隣には母親らしい女性がいて、母子で言い争っていた。いきなり始まった喧嘩の仲裁に入ろうか迷っていると、私の隣に座っている彼の父が「“私”が困ってるから止めなさい」と口を挟んだ。

子供のように膨れっ面になりながら父を睨む二人だが、私を見ると微笑んで普段の表情に戻る。家族で食事をしたことがない“私”にとっては楽しい団欒、“私”は穏やかなラベンダー色の瞳で笑った。

そこまで見ると世界が歪み始め、目の前が真っ暗になる。驚きのあまり目を白黒していると、私は白い靄の空間に戻っていた。

必死に探したが同じ玉は見つからない、桃色の髪の女が様々な年代で登場することだけは共通していたが何一つ同じものはなかった。

いつの時代も透き通る薄紫の瞳をした美女、王女である十代後半の彼女は私が探し出した肖像画に描かれていた人にそっくりだった。

「ラベンダー姫の世界だ」

誰かに質問したわけでもなかったが、その靄の世界は質問に答えるかのように明るくなり、急に澄み渡った。

条件反射で出口を探していると、明るい光を放つ一つの玉が近づいてきた。他人の記憶を盗み見ることはできない、そう思って目を反らしたが、いつの間にか記憶の中に入っていた。

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