The Kingdom of GodU

□第十四章 かけがえのないもの
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「私には身に余る相談事ですね。」

刑務所で薬箱を借り、図々しく最も有名な囚人に腹部の治療をしてもらいながら俺は彼に思いを告げた。

用件は大統領を失脚させる手伝い、国のリーダーが起こしている悪行の数々を世界中に知らせる手段を教えてもらうことだ。

“大統領は指揮者として相応しくない、王朝時代の方が良かった。”

国民はそう考えるようになり、自ら手をかけた王族を求めるようになった。事が大きくなって国をあげて今回の“王族の末裔探し”が始まった。

要はリーダーを変えられれば国民は満足なのだ。今まで決定的なボロを出さなかった大統領を退けさせるための口実として王族を引き合いに出したに過ぎない。

いつの時代も一番残酷な存在は国民。見方を変えれば、王族として認定されたレイや候補である俺達は彼らの為に拉致されて人生の一部を奪われたのだ。

だからこそ俺は自分や王族を守るために国民を使う。今ホールにいる人々を守るために大統領を失脚させなければならないと考えている。

しかし頼みの綱は曖昧に相槌をするだけで、あまり乗り気ではなさそうだ。

色素を失った白髪、皺が入った目元は王朝時代が歴史に埋もれることを示唆している。唯一鮮やかな輝きを残す瑚珀色の瞳はうつ向いていて俺達を見ようとしない。

せっかく大統領の娘の権限を利用して役員無しの面接をすることができたのに、あまりの歯ごたえの無さに無意味に終りそうだ。

「貴方の力が必要なんです。」

老人はうつ向いたまま考え込み、そのまま空白の時間が過ぎる。しばらくして彼は俺ではなく、後ろで大人しくしていた水色の髪の少女の方を向き、ゆっくり口を開いた。



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