古戀路

□第一章 始まりの小さな恋
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第一章 始まりの小さな恋

これは今は昔のこと、一人の少女が王宮の広い庭の端にある湖の前でため息を吐きながらしゃがみ込んでいました。華やかな桃色の髪に薄紫の瞳、整った顔立ちの美しい女の子…。

不意に左耳にあるピアスを取って私は手の平の上で踊りました。薄い紫水晶の裏にはメーシェルロイド=カンバードという名が刻まれています。それはこの国の王女の名前、つまり彼女の名前です。

とは言っても、彼女は純血の王女ではないので“国王の娘”というだけの人間でした。つまりそれは望まれて生まれた子供ではないということを表しています。

“汚れた血”と称されましたが、父親が国王のため違う呼ばれ方をされていました。

“薄紫の姫君”、王族の人が付けた最大の嫌味の称号です。そしてその証がこの薄い紫水晶のピアスでした。
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