古戀路
□第七章 生きていればきっと貴方に
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第七章 生きていればきっと貴方に
姫の意識が戻ったのは海に出て三日目のことです。そのころには袋ではなくベッドの上に横になっていました。
これは乗組員の慈悲の結果だと私は知っていますが姫は何も知りません。食事を運んでくる臣下に毎回荒々しい口調で聞いていました。
「フィーは無事なの…教えてよ。」と。
その度に乗組員は困った顔をして食事だけ置いて立ち去りました。その後の十日あまり、姫は自分に暗示を掛けるように王子の無事を願い続けていました。
私は姫に真実を伝えることも涙を流すこともできない身、気付かれのためか吐き気に襲われる姫を見守ることしかできませんでした。
船は予定通り祖国の港に着きました。愛人の娘とはいえ一国の姫であるメーシェルロイド姫の出迎えはあの国と比べて貧相なものでした。
港で待っていたのは五、六人の兵士に場違いなほど華やかな服装をした二十歳前後の男です。