小さな扉

□神歌の楔
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ギョッとするほど気味が悪い暗黒に近い紫色の空が天を覆っていた。天からも風の匂いからも今の季節を感知できない。

目の前には古い神殿が建っている。松明に点されうっすらと浮き出ている神殿はゾッとするほど不気味だ。

俺は氷付けにされて気絶したはずで、このような場所にいるわけがない。少し映像が褪せていることからもこれは誰かが見せているのだと言い聞かせて目の前の映像に集中した。

鐘が鳴り響き、何世紀も前の建築物が立ち並ぶ街から人々が集まり始めた。丘の上にある神殿から出て来る神官達の顔だちはまるで悪魔だ。

その神官達に連れ出された人間は四人、首を縄で縛られて手を後ろで拘束されている女達はどの人も美しかった。

いつの間にか俺の目の前にいた男は切羽詰まった声を上げながら一行を追っていった。着いたのは崖の上にある太い柱で、その柱に女達はくくり付けられている。

「やめろ!」

止めに入った男を神官が悪態を付きながら捕らえる。柱の周りにはたくさんの人が集まっていて、どの人も四人の女性を助けようとはしていなかった。

四人の女性はそれぞれの季節に似ていた。中でも黒髪の女性は彼女そのものだった。

「何も悪いことはしていない、他の三人だって何もしていないんだ。こんなのやめてくれ。」

神官は斧を取り出してきて彼に当てた。男がいた場所には彼の抜け殻と噴出した血だけが残っていた。柱に縛り付けられていた彼女の瞳から涙がこぼれた。

「いゃ……嘘よ。」

彼女同様柱に縛られている女達は彼女の名前を読んで宥めようとしたが、彼女は聞いていなかった。色々な感情で顔が引きつっていて、とても痛々しい。

「嘘よ、彼には手を出さないって約束したもの。なんで、なんで……私のせいで、私のせいでみんなにこんな選択までさせてしまったのに、彼まで。」

次の瞬間狂気に満ちた悲鳴が辺りに響き渡った。同時に雷が柱に落ちて、その柱を中心に何処から現れたかわからない雪が押し寄せる。雪は雪崩となり世界を一つ消してしまった。





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