The Kingdom of GodT
□第一章 手紙と生い立ち
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序詞 海の上の船
その日も彼女は普通より少し豪華な客船のデッキにいた。まだ太陽が昇り終わっていない初夏の海の上には潮風が吹き、どこまでも透き通るような快晴の空だった。
その景色に今日も彼女はいた。蒼い絵の具に碧が入るようなどこか美しい…
髪と瞳の色は父親譲りだが、彼の緑より薄い碧、林檎の葉のような鮮やかな色だ。若干瞳の色の方が深い緑で海にいても森を思わせる。
顔立ちは性格上ほとんど凛としているが、時々見せる優しく、柔和な印象を与える顔は間違いなく母親譲りだ。
その子はその日、大きな決意と共に海を離れることになった。