The Kingdom of GodT
□第六章 月夜のワルツ
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第六章 月夜のワルツ
『おぃリーベラ。』
今回は怒っている男の子の声。いつもは高くもなく低くもない聞き心地の良い声だが今は低音だった。
理由は私にある、最近こんな事ばかりだ。
『何よ。文句ある?』
リーベラ=アーウィング=シュトラウス、このシュトラウス家のお嬢様である彼女は大嫌いなドレスにハイヒールを履いている。普段は結わえていない髪の毛も今日はちゃんと後ろで一つに結んでいた。
一般人の普段着をこよなく愛するリーベラがここまでするのには訳がある。
先日目の前にいる少年が半強制的に彼女をある場所に誘ったからだ。
彼の名前はオーウェン=アイザック=キスリング。晴れ渡った空のような瞳に金糸のような黄金の髪を持つ少年で、この国で二番目に偉い一族の人だ。しかもその中で一番偉い。
彼は貴族の中の貴族と呼ばれる二つの家、キスリング家とアイザック家との間に生まれたお子様で、この国の貴族の中で一番偉いのだ。