小さな扉

□With You
2ページ/17ページ

キリスト教の神聖な行事であるクリスマスはこの国にとってはある一種のイベントと化している。

並木道には電球が取り付けられ、この日のために用意された電球の門が何十にも重なっていた。

そんな街に私は赤を基調としたワンピースを着てデコレーションケーキを片手に、もう一方はメガホンを持って叫んでいた。

お客はたまに来るが売り上げは良くない。クリスマスケーキを売るバイトの時給は売り上げが加算される。一週間で二万円ほど稼いだが、まだ足りない。

焦りが仕事に精を出すよう仕向けてくれたが、叫びながら宣伝したため声が枯れてしまった。

吸う度に喉に触れる空気は乾燥していて、粘膜の水分を奪われる。

ただ突っ立っている訳にはいかず、焦りがまた無理矢理声を出させた。

人々は反応するようになったが胸を貫くような視線が四方八方から向けられる。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ