小さな扉
□Broken Marionette
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家を出るとマンションの廊下に一人の男が手摺に寄り掛かって立っていた。細い体には程よく筋肉が付いていて背の高い人だ。
こちらに気付き話し掛けようとする少年を無視して通り過ぎようとする。
「こら、無視すんな。」
いつの間にか手首をしっかり捕まれていて振り解こうとするのと同時に額を指で弾かれる。高鳴る胸とは裏腹に私の脳内では何かがグツグツと煮えていた。
「幼馴染みに朝の挨拶はないの?」
「ない。」
心音は止まないが体は糸に操られているかのように鮮やかに彼の手を振りほどき再び歩き出した。彼は一拍遅れて閉まるエレベーターにすり抜けるように入って来る。
「おはよう、今日も相変わらずなご様子で。」
無言でにらみ付けると手を情けなく降って降参する。曖昧に会話を終らせると彼は話さなくなり、鼻歌を歌い出す。