短編集

□普通のシアワセ
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おはよう、こんにちは、こんばんは。
いただきます、ごちそうさま。
いってきます、ただいま。
ありがとう、ごめんなさい。

何秒何分何時間、何日何月何年間。

人生を過ごしてゆく中で、挨拶というのはとても大切なものだと思う。
また、相手と一緒にいる時間が多ければ多いほど、自然と挨拶を交わす回数も多くなるわけで。


「ふぁあーねむっ……おはよ」
「あっ、やっと起きた。おはよう」

朝飯の支度をしていると、もそもそと彼が起きてきた。

白いご飯にワカメの味噌汁。
先程焼いたばかりの塩鮭と、緑が鮮やかなほうれん草のおひたし、卵焼きも焼いた。
それらをテーブルに並べる。

「あーほんとねみぃ。6時とかよく起きられんのな、お前。……っとりあえずいただきまーす」
「ふ、そりゃあ会社行かなきゃなんないからね。どこかのニートさんとは違うのよ。ということで俺もいただきます」
「うわっ嫌味?さいてー」

そんなくだらないやりとりをしながらも、10分もしない内に彼と自分は朝飯を平らげた。
ごちそうさま、そう言って食器を片付けていく。

洗面所へ行き用事も済ませ、スーツに着替える。

「カバンとって、そこの」
「ほい」
「ん、ありがとう」

彼から鞄を受け取り、玄関へ向かう。
それに続いて、彼も自分をそこまで送り出してくれる。

「じゃあいってきます。……あ、いってらっしゃいのちゅーは?」
「バカお前、んなのやってられっかよ。どこぞの新婚野郎だ」
「えー」
「ははっお前ほんとバカ。早く行って稼いでこーい」

トンッと背中を押され、半ば無理矢理に追い出される。
玄関を出て、駅まで徒歩。
それからガタンゴトンと電車に揺られながら会社へ向かう。
会社に着いたら、上司から頼まれた仕事をこなすだけ。

精神的にも肉体的にも疲れてしまうけれど、家に帰れば疲れなんて簡単に吹っ飛ぶ。
それも、自分を待ってくれている、笑顔で迎えてくれる人がいるから。


「ただいま」

そう言って家のドアを開けると、いつも通りの彼がいた。

「おっ。おかえりー」

好きな人とたくさんの挨拶をできるのは、幸せの証拠。







→あとがき
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