短編集

□はないちもんめ
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「俺、あの遊びムリ」

突然何を言い出したかと思えば、

「かーって嬉しいはないちもんめ、まけーて悔しいはないちもんめ」

目の前にいる恋人は、歌いだした。

「あの子が欲しい、あの子じゃわからん」

はないちもんめ。
懐かしい。

「相談しましょ、そうしましょ。……あーほんと無理だこれ」

歌い終えた後、彼は大きな溜め息をついた。


「なんで嫌いなの?」
「……これ、すっげ残酷。お前も思わねえ?」
「えっ?」
「だってさ、選ばれないヤツはどうすんの」

体中の血管が、ドクリと脈を打った。

「なんつーか俺さ、ちっちゃい頃はかなりやってた。幼稚園ん時とか。自分でいっちゃアレだけど、人気者だったし、」
「うん」
「だから、俺は引っ張りダコで。いっつも最初に俺の名前呼ばれんの。で、すげー楽しくて」
「うん」
「でもさ、気づいた。これ、最後一人は残んねーといけねえのな」
「……うん」

頭の中に蘇るのは、昔の記憶。

相手のグループから、いつ自分の名前が呼ばれるのかとドキドキしながら待っていた。

「いつ誰だったかは覚えてねーけど、最後まで残ったヤツで悲しそうな顔したのがいてさ、」

けれど、一向に呼ばれることない自分の名前。
最終的には、周りに誰もいなくなった。
残ったのは、自分一人だけ。

「俺小さいながら、ああこれをザンコクっていうのかーって思ったもん」

人気者しか選ばれない悲しくて残酷な遊び。
自分もそう思った。


『――おまえもこっち来い』
『えっ』

しかしそこへ、輝かしく眩しいほどの光が差した。

『おまえ寂しそうだから、オレのグループに入れてやる』

いつの日だったか、手を差し延べてくれる誰かがいた。

「んー、僕は好きだよ。はないちもんめ。……ていうかさ、昔から変わんないよね君。優しいのに、傲慢」
「昔?お前と知り合ったのは最近だろ。……あ。つか傲慢は余計」

バカ、そう言って彼は勢い良く僕の頭を叩いた。
そして僕はふっと笑うと、彼は不思議そうな顔をした。

「もしかしてお前ってM?」
「ちーがーうー」


選ばれないことなんて、ない。
いつかはきっと誰かが選んでくれる。

『あの……でも、』
『いいんだよ!オレがおまえを欲しーの』

そう言って君が僕に手を差し延べてくれたように、自分を必要としてくれる。

『……うんっ』

君の手の、温かさを知った。








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