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□不意打ち
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〆日の土曜日

今日で今週の売り上げ順位が決定する。
この1週間、トイレにも風呂にも携帯を持ち込み、隙あらば営業に営業を重ねた。

電話はもちろん、太客細客問わず同伴の予定を取り付け、この1週間毎日同伴出勤だった。我ながらよくやったもんだ。


…しかし



『恭二さん4番卓お願いします!』

『恭二さんシャンパン入りました!』

『恭二さんこちらもお願いします!!』

『『『恭二さん!!』』』



「っだーーーーー!忙しすぎる!!何卓被ってんだよ一体!こんなんシラフでやってられっか!!」


俺は今、1番太い客の席で今さっき入ったばかりのドンペリゴールドを一升瓶のように持ってラッパ飲みの真最中。

本当ならヘルプに飲ませりゃ良いんだが、この客だけはちと厄介で、「恭二に入れたお酒なんだから恭二が全部飲まなきゃ嫌よ!」とか言い出す困ったちゃんだ。


『恭二素敵ぃ!相変わらず良い飲みっぷりね…もう1本入れちゃおっかなぁ♪』

「も、もう1本!?そろそろ俺の肝臓が使いもんにならなく……」

『いらないのぉ?ド・ン・ペ・リ♪』

「ありがとう、姫。愛してるよ」


我慢しろ俺、これ飲んだらすぐに………便所に直行だ!!



――――


―何だ?

―身体が重い

―頭が…



「ん……痛ってぇ…」

少しずつ目を開くと、ぼやけた視界がゆっくりとクリアになり、暗がりの中に見慣れたゴールドのシャンデリアが浮かび上がった。


「今…何時だ……俺は…」


「…………午前5時」


背後から聞き覚えのある声が聞こえた。

反射的に首を後方へ向けると頭にズキンと重い痛みが走る。

それは正しく二日酔いの前兆だが、心なしかまだふわふわと宙を漂う感覚が残っていた。


「土屋…何でお前…」

「…………ラストの客の会計の後、倒れた」


あぁ、バカな飲み方したからな。ツブれて当然だ。
そうか、コイツが介抱してくれたのか…。


「…………大事なczストを置いて、店を閉める訳にはいかない」

「acホスト…?」


何が何だかわからない。

スタッフが残ってるのはわかるが、どうしてよりにもよってコイツなんだ。
それにczストってのは10位以内の奴の事だろう?俺は圏外のはずで…


「…………売り上げを集計した」


土屋はまだ寝たきりでソファから起き上がれない俺の横にストンと座り、仰向けの俺の顔に1枚の紙切れを乗せた。

「ぶわっ!何すんだ…って、何だよこれ…? おい、これ…!!」
 
目の前にはこの2ヶ月間、見たこ事も無い桁と数字が並んでいた。


「…………6位だ。おめでとう恭二」


6位…?俺が?

開いた口が塞がらない。見間違いかとも思ったが、手にした紙に書かれた棒グラフの数字は間違いなく今までの3倍近い売上を記録していた。

 
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