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□黒猫のタンゴ※
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「康太ー遊ぼうよー」
「…………。」
「無視しないでよ〜」
「…………うん、」
じめじめした梅雨…
いやらしく週末を狙っての豪雨に、予定していた康太とのデートの予定もキャンセルだ。
それでも、気まぐれな康太がこの土砂降りの中、わざわざ来てくれて…感激したんだ。ホントに。
僕のケータイが鳴って「…今から行くから」という声を聞いた瞬間、嬉しすぎてちょっとべそかいた。
「せっかく来たんだからさー、ちょっとくらい構ってよー」
「…………うん、」
ダメだこりゃ。
さっきから、持ってきたノートPCに夢中で少しも相手をしてくれない。
これじゃお互い自分ちにいるのと変わらないじゃないか…
遊びに来たと思って浮かれてみれば、僕の事は放置?
そんなにパソコンが好き?
……ねぇ、僕は?
「……康太、僕の事好き?」
「…………うん、」
「……僕の事、嫌い?」
「…………うん、」
…もういい。
今日は康太と一日いちゃいちゃできると思って浮かれてた自分に、外で鳴り響いてる雷を落としてしまいたい。
つまんないからテレビでも見ようかと思って、チャンネルを回してみたけど、釣り番組やらサスペンスものの再放送やらで、見るからにつまらなそうだ。
「寝ちゃおっかなー…」
今のは、独り言と見せかけて康太に聞こえるように言ってみたんだけど…
「…………。」
ダメ。もう我慢の限界。
康太はいつだってそうだ。自分が構って欲しい時は猫なで声で甘えてくるのに、そうでない時は、まるで無視。
…猫なで声、かぁ
今の無愛想な康太からは、想像もつかない。僕の記憶違いかも…と思うくらい、遠い昔の事にすら思える。
…あぁもう!構ってもらえないからってウジウジ拗ねて…格好悪い!!
ちょっと横になって、頭冷やそう…
僕は少し大きめの音をたてて、寝室のドアを開けた。