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□La Cosa Nostra※
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ああ しくじった
仕事しか脳のない俺が仕事でしくじるなんてな…
「…ぐあっ、…っ」
もう何発腹に貰っただろうか、尖ったアメリカ製の靴で鳩尾をぐり…と抉られ、乾ききった喉からは醜いうめき声しか出てこない
イタリアンマフィア生誕の地、シチリア。
そこを制圧する巨大組織の本部が…俺が今拷問を受けてるこの大豪邸だ。
俺の所属する組織とは対立状態。終わらないシマの奪い合い、そして抗争。
そんな中、スパイ専門の構成員である俺は、1ヶ月前からこのファミリーに潜入していたわけだが…
ああ しくじった
「っ―――」
このまま意識を手放してしまおうか…そう思って目を閉じた瞬間、頭からバケツの水をぶっ掛けられ無理矢理覚醒させられる
「…っ!うぁ、つめ…っ」
「気を失ってもらっちゃあ困るんだよね。君には色々と喋ってもらわなきゃならないんだから…」
「……っ…話す事は、何もない」
「ふぅん…じゃあ、長引く事になっちゃうねぇ。めんどくさいなぁ…」
先程、ゾロゾロと黒服の部下を引き連れて部屋に入って来たこの茶髪の男。
へらへら笑ってはいるものの、空になったバケツに足を乗せ、俺の鳩尾を踏みつけた靴を部下に磨かせているその姿は圧巻。
さすがこのファミリーのカポだ。
タッタッタッタッ…
―――バタン!!
「吉井!ヘロイン輸送の件で顧問がお呼びだぞ!放って置くと厄介だ!」
大きな足音と共に乱暴にドアが開き、いかにも悪そうな顔をした長身の男が部屋に入ってくる。
「あー…また『鉄人』か…あの人本当に毎回僕のやる事に噛み付いてくるよねぇ」
「カミナリが落ちる前に早く行って来い。
…っと、コイツが例の…?」
長身の男が俺の顔を見て言った
紫がかった珍しい赤毛が印象的だった。
「そっ、スパイ屋のムッツリーニ君♪」
かわいいでしょ、と言いながら、吉井が俺の髪をひっつかんで上を向かせる
「…………ぐ、」
「…へぇ……女みたいなツラだな」
長身の男は俺の顔を舐めるように見つめ、ニヤリと笑った
「気に入ったんなら根本にあげるよ。拷問なんて僕の仕事じゃないし。
どこまで情報漏らしたかだけ聞き出したら…あとは、掟の元に。ね?」
そう言って、大勢の部下を引き連れたこのファミリーのドンは部屋から出て行った。