連載

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「…………終わ、るとか…っく、言う…な」

搾り出した声は酷く震えていて、雄二を威嚇したつもりなのに迫力なんて全然出ない。
言われなくてもわかっているのに、それを他人に突きつけられるなんて、ダメージが大き過ぎる。やはり傍から見ても、俺の一人踊りなんだと思い知らされてしまう。

頬をだらしなく伝う涙を袖で拭い、もう一度雄二を見据えると、さっきまでそこに深く皺を刻んで寄せられていた眉から、ふっと力が抜けて表情が変わった。

「なぁ康太」

「………ひ…っく」

「頼むから、泣くのは最中だけにしてくんねーか?」

「…………っ!さ、最低…」

そう小さく呟くと、「違いねーな」と言っていつもの悪人面でくくっと笑った。

あぁ、こういう所に俺は救われる。
雄二からの好意を利用して、甘えていると言われても何も言い返せない。

俺の頬を包み込む大きな手が泣きたくなるほど優しくて、思わず自分から縋り付いた。

「…………ん」

キス、されている。
いつもの噛み付くようなそれではなく、今日は酷く優しく重なる。
強引に舌を入れる事もされず、離れたと思えばゆっくりと角度を変える。


…初めのうちは良心が痛んだ。
雄二の優しさにつけこんで、温もりを欲しがっている時に慰めてもらう…なんて、まるでセフレみたいで。

雄二は大事な友達なのにと、いくらそう言っても今みたいに冗談ではぐらかされてしまって、そのまま流れに身を任せた。
毎日毎日、明久に対する一喜一憂で疲れてしまった俺に、雄二は優しかったから。


「…………は…っ」

いつの間にか俺の後ろに回されていた雄二の手が、ブレザーの上から腰のラインを撫で上げる。
同時に唇を舌先でなぞられて肩を竦めた。
これだけでも無様に感じてしまう浅ましい身体が憎らしい。
でもこんな俺にしたのは誰でもない、雄二だ。

「物欲しそうな顔しやがって…」

「…………誰のせいだと…」

「俺か? …だったら光栄だな」

強く壁に押し付けられ、今度は容赦なく唇に噛み付かれた。

歯列をこじ開けられ、舌がぬるりと進入して来る。
舌を絡め取られ、口内を好き放題犯されるだけで膝からガクりと崩れ、コンクリートの床にしゃがみこみそうになるのを、雄二に強く抱かれる事で免れた。

「…………馬鹿…昼休み…あんなにシたのに…」

「だったらもーちょい嫌がれよ」

「…………だ…て、ふ、ぁっ!」

雄二の長い指がスラックスの前をなぞり、あろう事かホックを外して前を開かれてしまう。
ボクサーパンツに容赦無く手を突っ込まれると屋上の風が下着の中に入り込んで、ここが外なのだと思い出させられる。

「…………だめ…ゆーじ、だ、め…っ」

「堪んねぇんだろ?先っぽ濡れてるぜ」

「あ、んぁ…っ!」

先端を指でぐり、と押されて思わず大きな声が出てしまう。
屋上とはいえ今は授業中だ、背徳感に苛まれて、今俺の顔はきっと真っ赤だ。

俺の先走りをたっぷり絡めた雄二の手のひらが俺の物を握りこみ、上下に扱き始めた。
ぐちゅ、ぐちゅ、という卑猥な音が、湿った空き教室ではなく、こんな青空の下で響いているのだと思うと恥ずかしさに涙がこみ上げて来た。

「あぁっ、あ!ん…だ、め…って」

「あんまヤダヤダ言ってると…止めちまうぞ?」

さっきまで性急に動いていた雄二の手がだんだんゆっくりになり、挙句の果てに扱くのを止めてしまった。
高めるだけ高めておいて酷い仕打ちだ。動かなくなった手から少しでも刺激をもらおうと、浅ましい腰が勝手にゆらゆらと揺れる。

俺の形だけの抵抗など雄二はお見通しなのだ。

「…………やぁ、やだ…もっと、動かして…」

「…こうか?」

雄二の手が今度は焦らす事無く、射精を促すように先端を中心に激しく上下に動く。

「ひぁっ!?は………っあ!ああ!」

不意打ちの快感に熱いものが一気に下半身に集まり、じわっと汗が額に滲んだ。

「だめ、イッちゃ…あっあ、あ、ッく……んん!!」

おあずけをされて熱を帯びた身体は、湧き上がる射精感を我慢する事もできず、先端に爪を立てられた刺激に負け、あっさりと雄二の手の中に精を放ってしまった。

余韻でびく、びく、と雄二の手の中で痙攣する自身を忌々しく見つめていると、雄二のズボンの前もさっきの俺と同様に張り詰めているのが目についた。

「…………ゆーじ、は?」

息の整わないまま口を開くと、未だろれつが回らず、頭の悪い奴みたいな口調になってしまい、雄二にクスッと笑われてしまった。

「そーだな………放課後、いつもの場所で、な」

繁殖期真っ盛りな雄二にやや呆れながらも、一瞬垣間見えた愁いの表情がやけに気になった。

   
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