カラ松恋愛事変

□デ、デート?
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「たまには、どこかに行ってみないか?」

翌る日の昼下がり赤塚橋近くのベンチにて、いつものようにカラ松と時雨はたわいない話に花を咲かせていた。
いつもと変わらないこの日常、ずっとこの時間が続けばいいとカラ松は考えていたが、今日のカラ松はとある思いを滾らせていた。
それは、時雨とデートをしたい…!という熱い思いだった。

いつもと同じようにベンチで話すのも楽しいが、折角男女二人でいるのだ。巷の男女二人がしているようなことがしたいと、時雨と会うにつれて欲を深めていた。
そしてその欲はパチンコで大勝利を収めた日に爆発した。
支度金は整った、あとは時雨を誘うのみ!

思いが強すぎて、カラ松はいつものかっこつけを披露することなく、普通に誘った。
極度の緊張で心臓はバクつき、声は震え、体はもじもじとさせていた。
全然男らしくない仕草だが、素の松野カラ松という男は本当はこうであるのかもしれない。
そんなカラ松の申し出に、時雨は首を傾げ、カラ松を見つめる。

「どこかって?」
「それはだな…」

カラ松は考えていた。
時雨との綿密なデートプランを。
だが、いざそれを言おうとするが、中々言葉にならない。
もし行きたくないと言われてしまったらどうしよう。
そう思うとなんだか怖くなってしまって、まごついてしまう。

そんなカラ松を見ていた時雨は、少し考えて、ベンチから立ち上がった。

「折角いい天気だもんね、お出かけ日和だなーって思ってたんだよ!」

そんな時雨をみて、カラ松は少し呆然としていたが、時雨に腕を引かれて立ち上がる。

「お散歩でもしよっか!」

そういってにこりと笑う時雨をみて、カラ松は高揚感に身を包まれた。

時雨と、散歩。
いつもベンチでしか話してなかった時雨と、お出かけ。

「カラ松くん、行きたいところある?」

前に歩き出し、振り向きざまにそう言って尋ねる時雨をみて、カラ松も歩き出す。

「少し考えてみたんだ!」
「え?何々?」
「駅前のショッピングモール、新装開店したの知ってるか?」
「あー!あそこ行ってみたいと思ってたんだー!」
「そこを色々見て回れたらなぁ…と思って」

女子に人気のお店がずらりと並んだショッピングモールが新装開店した情報を、何かと女の子と遊ぶ機会がある兄弟の末っ子、トド松から情報は入手済みだった。
トド松から話を聞いていた時から、時雨と行ってみたいなぁと思っていたカラ松は、事前に一人で赴き下調べもバッチリしていた。
女性ばかりがいるお店に男一人で赴くのは中々に気まずかったが、時雨の喜ぶ顔が見れると思えば、カラ松は何も苦ではなかった。

「あとは、時雨がいつも行ってるお店とか、気に入ってるお店とかもしあれば、行ってみたい。」
「私が?」
「ああ…」

そして、いつも自分の話をたくさん聞いてくれる時雨のことをあまり知らないのだと、カラ松はふと気付いた時があった。
時雨の全てを知りたい、なんておこがましい事は思いたくないのだが、
少しでも、少しだけでいいから、時雨の好きなものを共有したいとカラ松は思っていた。

そして、時雨の好きなものを、自分も好きになれたら、もっと話が弾むのではないかと思っていた。

「どうだろうか?」

隣に並ぶ時雨の顔をおずおずと見つめると、時雨は顎に手を当てうんうんと相槌を打つと、にこりと笑って「楽しそう!」と言った。


「私がよく行くお店かぁ…個人的にお気に入りのカフェがあるんだけど、そことかはどう?気分転換でよく行くんだけど」
「カフェか、いいな。俺も行きたい!」
「じゃあそこにしよう!そこのカフェね、絵本とかも見れるんだよー。」

だんだんと作り上げられていく二人のデートプランに、カラ松はとても嬉しくて、感動して、心の中で涙を流し、時雨に見えないよう隠れてガッツポーズをした。
ちらりと隣を見ると、絵本カフェやショッピングモールについて色々話してくれている
時雨がいて、その顔はとても楽しそうにニコニコしていて、
誘ってよかった、時雨が楽しめるように、俺も頑張ろう、そうカラ松は思った。



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