□幼馴染
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「どちらが先に水柱になるか、競争だな。」

さらさらと悲しい音を立てて斬ったばかりの鬼の頭が消滅していくとき、凛人は言った。

「今の階級が己、このまま順調にいけば、斬った鬼の数も50を越して柱になる日もそう遠くはないはずさ。ここで再度身を引き締めるためにも勝負事にすればお前も、」
「柱は凛人がなればいい、俺は水柱になっていい人間じゃない。」
「…なんだと?」

凛人の言葉を遮り言った義勇の言葉に、凛人は口元をひくつかせながら義勇を見やる。

「義勇、もし錆兎のことを言うなら、私もなっていい人間ではないということになるな。」
「そうではない。」
「どう違うんだ?」

間髪入れず言い放った凛人の言葉に、義勇は顔を俯かせ黙り込んでしまう。
そんな義勇の姿を見て、一つため息を吐き凛人は義勇に背中を向ける。

「お前はまたそう卑屈なことをいう。何度言っても治らないな。」

鬼の血を一振りで弾き、刀を鞘におさめる。
今日、凛人と義勇は共に鎹鴉の指示のもと鬼狩りにきていた。
鬼殺隊の人員は少ないため、基本は一人任務が多いのだが、最近では凛人と義勇との共闘が凄まじいとお館様と呼ばれる輝哉の耳にも入っており、鬼からの被害度合いにより共同任務が入ることも多くなっていた。
この待遇は、両者共に願ったり叶ったりのことであったりする。
中々顔を合わせない日々が続けば安否報告として鎹鴉を通じて文を飛ばすが、共同任務があれば安否を自身の目で確認することが出来る。
凛人と義勇はお互いに失くしてはならない存在として認識しており、その思いは鬼を滅殺する毎に大きくなっているのだが、双方はそれを自覚はしていない。

「勝負事に戦わずして降りるなんてこと許さないぞ、そんなことをしたら私がお前を殺してやる。」
「何故そう物騒なことを言うんだ。」
「鬼に殺されそうになっても、先に私がお前を殺してやる。鬼に殺されるお前なんて見たくないからな。」
「…そうか。」

あっはっはと豪快に笑いながら歩き始めた凛人の背中を義勇はついていく。
鬼を殺した後も休まず目指すのは三人が共に暮らした狭霧山だ。
錆兎がいない今も、二人は任務が終わると狭霧山に篭り修行をする。
一人の時は一人で、
二人の時は二人で、
そうして彼らは切磋琢磨し力をつけてきた。
下級の鬼であれば一太刀で難なく斬れるほどに。

鬼の根源、鬼舞辻無惨の首を斬るため、幼き日のあの夢を果たすために。


「ねぇ、錆兎、義勇。」
「なんだ、凛人」
「どうしたの?」
「鬼を全部斬って、いなくなったら、鬼がいない人間だけの世界を共に生きよう!だから、絶対に生き抜こうね!」

三人で笑い合い、鍛錬し、語ったあの夢を果たすために。
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