□人間を守る鬼
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煉獄杏寿郎は頭を抱えていた。
それは狐面をつけた件の鬼のせいであった。

実はこれまでで通算二度も対峙しているのだが、煉獄が頭を抱えている原因は、捕らえることが出来てきていない現実にあることだ。

なるべく傷つけず生きて捕らえよ、という輝哉の言いつけを守って手を抜いているからとかそういうわけではなかった。
全力で捕らえようと追いかけるのだが、物の見事に振り切られてしまった。
あと一歩、というところで目くらましをされるのだ。
それは鬼による幻術なのか、なんなのか。
とにかく捕らえることができなかった。

柱合会議でその話をすると、他の柱からはげらげらと笑われてしまい、情けなさに煉獄も「むぅ、」と肩を落とす。

「煉獄に掴まらねぇとは、その鬼もやるじゃねぇか。派手に結構!」
「二度も逃げられるとは、炎柱が聞いて呆れるぞ。」
「なんで煉獄の前にしか現れねぇんだよ、俺の前に出たら一発で仕留めてやるのによォ。」
「不死川さん、その鬼さんは殺しちゃ駄目みたいですよ…?」
「分かってんだよそんなこと!例え話だ。」
「不死川さんが言うと例え話には聞こえませんけれどね。」
「お館様の希望を未だに叶えられないとは、ああ、虚しい…。」

各々が話し始める様を、輝哉は微笑を浮かべて聞いていた。そして口を開く。

「杏寿郎、もしもまたその鬼が目の前に現れたとき、少し話をしてみてくれないかい?」
「…話、ですか?」
「もしかしたら、立ち止まって話を聞いてくれるかもしれないからね。」

輝哉の言った言葉に、勢揃いしていた柱の者たちは驚いて目を見開き、輝哉を見つめた。
鬼と話なんて、正気の沙汰ではない。
なぜならまともに会話ができる鬼なんて、そうそういないからだ。
大体が理性を失い、人間を見ると喰ってかかる危険な存在であるし、
結局鬼と人間の関係は、狩るか狩られるかなのだ。
話をしよう、などといって仲良しこよし、馴れ合いが出来る訳がない。

そう皆が皆心に思いながら、煉獄の返答を待つ。

「分かりました。」

そう言った煉獄に、またも皆目を見開き驚くこととなる。
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