□鬼の襲来
1ページ/1ページ

冨岡と煉獄が話し合ったあの日から、凛人はとんと姿を現さなくなった。鬼殺隊の隊服を着た鬼の出没情報もまるでなくなった。

とうとう滅されたのだろうか。
でもお館様の命では生きて連れて来いとの話だったろう?
間違えて斬っちまって、取り返しがつかないから隠蔽したのではないか?
それとも鬼同士で共食いでもしたか?
そもそも、鬼殺隊の隊服を着て、日輪刀を持つ鬼なんて、人間を守る鬼なんていたのだろうか。すべては架空の作り話であったのではないか。

そんな話が鬼殺隊内でこそこそと話されることもあったが、時が過ぎるのは世の中の常。二年も過ぎれば、だれも狐面の鬼の話はしなくなった。

一度目の柱合会議では、
「おい煉獄、あの鬼とはもう会ってないのか。」なんて話も出たが、
二度目の柱合会議では、凛人の話はまるで出なかった。

煉獄は内心、冨岡がどうにかしたのではないかと思った。まさかな、と思いながらもちらりと冨岡に聞いたが、「知らん。」の一言であり、それ以上聞くなと圧を感じた。
本当に知らないのだろうと、なんとなく思った。本当に凛人を斬ったのなら、いまこの場に冨岡はいないような気がした。
それでは他の隊士に斬られたか?いや、そんなことはないだろう。凛人の強さは尋常ではない。柱でも相手にしなければ、柱が相手になったとしても結果がどうなるか分からないほどの強さを凛人は秘めていることを煉獄は感じていた。
自分以外の柱が、最近大きな怪我をしただとかそんな情報も特にない。では一体どうして…

煉獄は人知れず考えを巡らせたが、結局真相は闇の中だった。

煉獄も、何故自分がここまで鬼の事で考え込まなければならないのかと気づき、通常任務へと戻り、過去は風化していった。











さてはて、件の凛人はどうしたのかというと、珠世の邸宅にいた。
最初の頃と同じように、ずっと寝入っていた。いまも、ずっと起きる事なく。
突然帰ってきたと思ったら、凛人は全身血濡れていた。
どうしたのかと珠世や兪四郎が近寄った時には倒れこみ、そのまま死んだように眠り始めたのだ。珠世がその体を抱えた時に、全身に張り巡らされた紋様が見えた。その紋様は日毎に消えていった。
一体、凛人に何があったのか。
傷は塞がっているとしても、相当な傷を負ったに違いない、と珠世は考えていた。

実際にそれは当たっていた。

凛人は、上弦の鬼二人に囲まれたのだ。

「あの方が言ってたのはお前だな…?狐面。」

最初出てきたのは、見た目からして弱々しく、体を震わせとても怯えている腰が引けた鬼だった。何だろう、と動向を目で追っていた凛人だったが、飛んでこちらに襲いかかってきたためばさりと一振りで首を斬った。すると、その首から、胴から、鬼が生えてきた。

「さぁさ、俺たちを楽しませろ。」
「喜ばせろ。」
「苛つかせるな。」
「哀しませるな。」

斬れば斬るほど増えていき、最終五対一となる。
鬼同士の戦いは不毛だ、日に当てる以外お互いトドメをさせないはずで、泥仕合になってしまうのだから。
だが、凛人の手には日輪刀が握られている、鬼の首を斬り滅することができる刀だ。
だが、余りにも敵が多すぎた。

「ねぇねぇ、凄く楽しそうだね!俺も混ぜておくれよ!」

背後には、にっこりと不気味なほどに笑った、もう一人の鬼がいた。
次の章へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ