□目覚め
2ページ/2ページ





二年眠り続けた凛人の血を拝借して、珠世は研究を続けていた。
寝れば寝るほど、凛人の細胞は鬼舞辻無惨の細胞を食い潰しているようだった。
紛い物の血を自身の血に取り込み、鬼舞辻無惨の痕跡を無くしていく過程に、珠世は目を見開くものがあった。
凛人が次に目を覚ました時、凛人は、鬼舞辻無惨の支配から完璧に逃れているのではないか。
太陽を克服し、いつか人間に戻るのではないか。
珠世は、希望を見出していた。

そんな時、凛人が、ゆっくりと目を開き、覚醒した。

身体を起こし、珠世を確認すると、

「おはよう。」

そう、凛人が、笑顔で言った。

「…おはよう。凛人。」

珠世は凛人に近づき、その身体を抱きしめた。
凛人の表情は、明らかに、二年前とは異なっていた。
人間らしい気配をまとい、表情も、言葉も、豊かになっていた。
まだ記憶は完全には戻っておらず、たどたどしい面もあるが、
たぶん、凛人は自我を取り戻すよりも先に、体内の作りを大きく変えることに労力を使っているのではないかと推察した。
二年ぶりの目覚めだが、到達に至るまでにはまだもう少し時間がかかるのだろうことも予測された。

「いつも助けてくれて、ありがとう。」

そういって感謝を言う凛人に、珠世は涙を流しながら頭を撫でて抱きしめた。
兪四郎は、そんな珠世と凛人をみて、なんて羨ましいんだこの野郎。今日の珠世様は泣いている姿も美しい。と、そう思いながら兪四郎も涙を浮かべた。
次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ