□目覚め
1ページ/2ページ



様々な記憶が目の前を左から右に流れて、
永遠に絵巻を見せられているような気分になる。

ああ、懐かしいな。
こんなこともあったな。

なんて、少し楽しんでいたのに、
その視界もだんだんとぼやけてきて、あたりが真っ赤に移ろい、とうとう視界すべて赤色となってしまった。

そんな様をぼんやりと見つめていると、どこからともなく声が聞こえてくる。
右から、左から、反響したように聞こえてくる。

「鬼殺隊を殺せ」
「柱を殺せ」
「人を食い尽くせ」

低く、ねっとりとした、だが一方で、優しく、子供に言い聞かせるように、

「人間を喰って、強い鬼となれ。」
「誰よりも残酷な鬼となれ。」
「私のために、」

背後から気配がする。
その気配は段々と近づいて、
そして、顔を、腕を、手が伝い、そして、
露わになった首を、噛まれた。

痛い、痛い、痛い…!

肉を噛みちぎり、いたぶるように舌を這いずり、血をすすられる。
ああ、だめだ。私はこのまま喰われるんだ。

そう、思った時、

「俺の思いは継いでくれないのか。」

聞き覚えのある声が聞こえる。

「ここで諦めるのか。」

よく聞きなれた、自分を奮い立たせる声が、

「凛人!戦え!!」

声を皮切りに、今まであんなに動かなかった体に力が入る。

こんなやつに、私は喰われない。
私は、鬼殺隊隊士、鬼を滅殺するものだ!

右手には日輪刀が、自分の思いと共鳴するように浮かび上がる。
渾身の力で自身の首にかじりついたそいつの脳天に刀を突き刺す。

すると、背後にピタリとついていた者は気色悪い叫び声を上げて遠ざかった。

振り返り、その紛い物と対面する。

その姿は、自分が追い求めている鬼、鬼舞辻無惨の姿をしていた。

脳天に刺したはずだが、その傷跡はとうに消えている。

「私はお前を許さない。」

鬼が人を喰い、
父上、母上、錆兎、大切な者が死んでいく。
悪戯に鬼を増やしたこの男を、

そして、
私を鬼へと変えたこの男を、絶対に許さない。

刀を構え、走り出す。鬼舞辻無惨もまた凛人へ襲いかかる。
凛人は、腕を振りかぶり、

鬼舞辻無惨の首を、斬り落とした。
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ